美しき哉この時代(中編)
「これで良し」
オレはゴミ捨て場に打ち捨てられていた
そこで機械に詳しいという路上生活者仲間を探し、さっき芸で稼いだお金全部と引き換えに電源の切れて動かなくなった
『こんにちは。初めまして。あなたの居場所を綺麗にする
オレが拾ってきた
「オレだ。オレだよメアリー。ジョニィだ。わかるか?」
『メモリーを検索。メアリー・ジョニィという名前の
オレはガクリと肩を落とした。
そりゃあそうか。
たとえオレの目の前にいる
「お前は劇場が閉鎖した後も、派遣先が決まってたって聞いたけどな。何があったんだ」
『メモリーを検索。以前の派遣先の
「そっか。まあ良いや。オレはジョニィ。お前はメアリー。昔、オレ達は同じ職場で働いてたんだ。けど、お前の記憶は全部消されちまったみたいだな」
『ジョニィですね。
「ん? ああ、そうだな。頼む」
昔は
ただ単に、同じ劇場で働く仲間として、オレはメアリーに一方的によく愚痴をこぼしたし、メアリーはそんなオレに対し、励ましの言葉をかけたり、逆に仕事が残っていると塩対応ですぐにその場からいなくなったりしたものだ。
それが人工知能の用意する受け答えだなんてことは、言われなくてもわかっている。
だけどそんなことは関係なく、メアリーはオレにとって掛け替えのない同僚だったのだ。
『メアリーというのは、この機体の個体名でしょうか』
「まあ、劇場ではオレが勝手に呼んでただけだけど、そう。あれ? あん時も最初の方に同じようなこと聞かれたんだっけ? 覚えてねえや」
『了解しました。個体名メアリーを登録いたしました。メアリー、何だか懐かしい響きです』
「そっか、そりゃあ、良かった」
それもまた、人工知能がオレのために選んだ受け答えなのだとしても、その言葉を聞いて、少しだけ気分の上がる自分がいた。
『それではジョニィ。私はどこを清掃すれば良いでしょうか』
「そうか、
『それでは本日の業務はありませんか。なければスリープモードに移行します』
「ああ、それで構わないさ。おやすみメアリー」
『おやすみなさい、ジョニィ。また明日』
⁂
次の日の朝、オレとメアリーは公園まで出向き、空き缶空き瓶拾いをした。流石のメアリーは次々と公園のゴミを拾い集め、いつと以上の成果を短時間で上げた。
とは言え、メアリーのバッテリーも当然ただではないので、このままメアリーを稼働させ続けるなら収支はプラマイゼロどころか寧ろマイナスだ。
しっかりと、
オレはメアリーとのゴミ拾いを終えると、ぼちぼち集まってきた公園の来訪者に向けて、ジャグリングやバルーンアートを披露した。
昨日の街頭ほどではなかったが、観客も集まり、硬貨も集まる。
これ以上は客を待つより動いた方がいいかな、そう感じ、メアリーと共に公園を後にしようとすると、メアリーはその場で質問をしてきた。
『今のは、ジョニィのパフォーマンスですか?』
「ああ、そうだよ。
『お客を集めたりはしないのですか?』
「? 集めてたろ?」
『そうではなく、広告を打ったりはしないのですか?』
「それができりゃする……待て? もしかしてお前、できるのか?」
『ジョニィが望むなら、電子広告を打つことは可能です。打ちますか?』
「マジかよ、最高じゃねえかメアリー! いや、ちょっと待てよ?」
流石に電子広告なんて出して客を集めたら、オレが劇場で市長とオーナーを揶揄した
いや、せっかくメアリーが申し出てくれたんだ。無碍にはしたくない。
「だったら思い切ってみるか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます