Chapter2:The Girl with Savage Respect
憧れの剣闘士(前編)
『優勝は無敵無敗の“
やった! 画面越しの試合結果を観て、あたしは思わず小
あたしの推す剣闘士、無敵の“
つまり、彼は
ファンのあたしも勝手に鼻が高くなろうと言うものだ。
試合前の
曰く『奴の試合は大抵、
あたしは賭け得る限りの
見る目の無い糞野郎共に彼の強さを知らしめた気持ち良さも、あたしの心中を支配していた。
結果、思いがけない臨時収入も得た。正直お金が欲しくて賭けたわけではないが、悪くはない。
最初に思い付いた使い道は、父が使っている
「と言うわけなんだけど」
あたしは父があたしに稽古を付けてくれている最中にそのことを話した。
父は呆れ顔で溜息を吐き、拳を握りしめてあたしの肩関節を殴った。
「ありがと」
父は戦争の負傷で、脚の機能を失っている。
それだけでなく、視力も半分はほぼ見えない。普段は
それは心底気に入らないが、実際のところ、そんな状態でも満足に闘えた試しはないのだから舌打ちするくらいが精一杯だ。
父の手を取ると、その瞬間、父はあたしを背負いあげて反対方向に背中を叩き付けた。
「
「油断をするな」
父は倒れたあたしの目の前に座り込むと、
「狡いだろ、糞親父」
「また勝手に賭け事を……まあ構わんが」
「
父は怒ったような困ったような複雑な表情をして、それからまた溜息を吐いた。
「俺は良い。方法はさておき、お前が手にした金だ。好きに使え」
「そっか」
「だからってジャックのポスターをもう一枚買うとかはやめろよ」
「げえー」
あたしの自室には、剣闘士ポスターが飾ってある。当然、ポスターにその姿を飾るのは無敵の
「男の嫉妬は見苦しいぜ」
「吼えろ」
「図星かよ」
あたしは背中を起こして、父の前に座り直した。
父もまた、
戦争で脚を失い、視力すらも失い欠けた父は、軍属を続けることも出来ずに、
試合では、生身の身体を使用するのではなく、
故に、父はその半身不随の身体に関係なく、純然たる戦闘技術を駆使して、試合を行うことが出来、
それ以外のバイトもして、あたしと父、家族二人の生活を支えてくれている。
真っ当な仕事に就くのが理想だが、戦争難民でもある、あたし達家族の受け入れ場所なんてない。
「どんなことがあっても、お前がこれから生きていけるように」と、あたしは幼い頃から父から戦いの技術を教え込まれていた。
まだまだ敵わないのが現状だけど。
そんな父の事は、正直かなり尊敬している。あたしの永遠の推しは間違いなく
「あんたも出りゃ良かったのに。
「
「ふうん」
父は
「休憩は終わりだ」
「休憩だったの……」
仕方ない。あたしも父のように、強くなりたい。容赦ない父の
「んだよ!」
興を削がれ、あたしは肩を落とす。
父も苦笑して玄関に向かい、扉を開けた。
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