人生最悪のバレンタインその1
2月14日。バレンタイン。
チョコを渇望する輩が増殖する日である。
当然、俺もその一人に該当するため、妙に浮き足が立っていた。
せっかくなので、俺のバレンタイン戦績を振り返ってみるとしよう。
小学校低学年。
母親、妹、幼馴染からの計3つ。
小学校高学年。
母親、妹からの計2つ。
中学校。
母親から1つ。
歳を重ねるごとに、俺宛てのチョコは減っているのが見てとれる。
かつては幼馴染がくれていたけど、地方に引っ越してからは疎遠状態。
妹も自然と渡してくれなくなり、頼りの綱は母さんだけとなっている。
「哀れだな俺……」
呆れたように自嘲する。
高校生からはチョコの個数を増やしていきたいものだ。
どうせ何もないと本心では理解しつつも、若干の期待を込めながら下駄箱を開ける。
フッ、やはり何も……。
「え」
バタン、と勢いよく下駄箱を閉める俺。
そしてもう一度、今度は注意深く中を観察した。
「…………」
俺の下駄箱の中に、ラッピングされた何かがある。
直感的に
「落ち着け……落ち着け俺……」
まだチョコだと確定したわけじゃない。
確信を得るために、早速ラッピングを剥がしていく。
「おお」
市販のチョコだが、ハートを模した形をしている。
チョコの他には、メッセージカードが内封してあった。
『神田騎士くんへ
勝手に下駄箱に入れてごめんなさい。
受け取ってもらえると嬉しいです。本命チョコです♡』
可愛らしい丸文字。
俺の名前が書かれていることから、間違って下駄箱に入れた可能性はなくなった。
裏面を見る。
『私の電話番号です。
080-XXXX-〇〇〇〇
連絡くれると嬉しいです。初音こより』
しかし俺の胸の高鳴りは、長くは続かなかった。
差出人の名前を見て、俺は現実を思い知ったのだ。
「はは……馬鹿だな俺……」
ちょっと前に、罰ゲームで告白されたばかり。
なのに、どうしてこう素直に引っかかっちゃうかな。
初音姉妹と言えば、ここら辺では有名人だ。
アイドルにも引けを取らない類稀なルックスを持った一卵性の双子。
今度は妹の方が、俺を馬鹿にしにきたようだ。
「ざけんな」
気がつくと、俺はメッセージカードをビリビリに破りトイレに流していた。
どうやら、今までの人生の中で一番最悪なバレンタインになりそうだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます