天妃物語12
「貴様らのことは一度として忘れたことはない! 貴様らのもたらす
黒緋はそう言うと強大な神気を発動しました。
こうして戦いながらも黒緋は紫紺の動きを目で追い、腰に携えていた刀を投げました。
「紫紺、使え!」
「ありがと!」
紫紺が刀を受け取ります。
そして上空の
「えいっ!」
「ギャアアア!!」
しかし
「ははうえ!」
「あなたには指一本触れさせません。私も一緒に戦います」
紫紺は私が守ってあげるのです。
おんぶしている青藍も「あいあ〜!」とはしゃいだ声をあげます。分かっています、あなたも一緒に戦うのですよね。
「黒緋様、紫紺、離寛、援護します!!」
遠い昔、私たちは
でもその時は黒緋が一人で戦いに
私も一人で封印術を発動し、一人ですべてを
しかし今、戦っているのは黒緋、紫紺、離寛、私。それに青藍が応援しています。あの時とは違って一人で戦う者などいません。今ここにすべてが揃ったのです。
「ああ、頼んだぞ鶯!!」黒緋が
「ははうえ、ありがと!」紫紺が刀を構えて
「天妃様、至極光栄です」離寛が
私は大きく頷いて、全身全霊の神気を集中します。
それは千切られてしまうけれど、また新たな布帯がすぐに絡みついて
「さあ、決めてください!!」
まず紫紺が素早い動きで接近し、光すらも切り裂く
続いて離寛が得意の槍で
そして最後に黒緋です。
「この
ズドオオオオオンッ!!
黒緋が
しかしその隙に
黒緋がゆっくり振り返りました。
「消えろ」
ドンッ!!
最後に残った一体も跡形もなく消滅し、とうとう
「ああ、終わったのですね……」
私はため息とともに呟きました。
戦いを終えた紫紺が笑顔で駆けてきます。
「ははうえ〜!」
「紫紺、お疲れさまでした。よく頑張りましたね」
「うん!」
足にぎゅっとしがみついてきた紫紺を私も抱きしめます。
本当によく頑張ってくれました。あなたが強くなってくれたから四体を分断して戦うことができたのです。
はしゃぐ紫紺の姿に目を細め、次に黒緋に目を向けました。
「お疲れさまでした」
そう言うと黒緋が頷いて歩いてきます。
私の前に立つと優しく抱きしめてくれる。
「終わったぞ。お前を長く一人にしてすまなかった」
「いいえ、ありがとうございました。ずっと……、ずっと探してくれていたんですね」
「会いたかったんだ。ずっと伝えたかった、愛していると」
黒緋はそう言うと私を抱きしめる両腕に力を込めました。
ああ、ずっと愛していました。記憶を忘れても、すべてを失っても、それでも黒緋を愛していました。長く長く、ずっと長く黒緋だけを。
「っ、黒緋さま……、黒緋さま……っ」
「ようやくお前を迎えにこれた」
「私も、あなたにずっと会いたかったです。私の
やっとです。やっと帰ることができたのですね。
私は黒緋の
黒緋の大きな手が私の髪を何度も何度も撫でてくれました。
「おかえり、鶯。一緒に帰ろう」
「はい。ただいま戻りました。帰りましょう、みんなで一緒に」
すると目が合って、なんだかくすぐったい気持ち。私たちは小さく笑いあって、見つめあったまま引かれあうように唇を重ねたのでした。
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