敵、参上!


「アキラ!一花!…良かった!助けて!」


ママは俺と一花を一緒に抱きしめた。

な、何があったんだ?


「ど、どうしたんですか?ママさん」


「実はやりすぎちゃって…」


「え?どういうこと?」


俺たちはポカンと顔をしていると三葉さんが俺の方に近づいてきた。


「実は立花さんのリモコンなんだけど、壊れてたの…その上、あの人は今、寝ちゃってて…」


「え?死んだんじゃ?」


「それがあの人、何かあった時用の血糊が漏れちゃって気管に入ったらしいの」


「「はぁ?」」


「で、さっきまで毒を飲んだと勘違いした人にボコボコに殴られて別の意味で寝てるね。『これで逃げれない』って言ってたのはリモコンのボタンを潰しちゃって逃げれなくなったってことを言ってたんでしょう」


やれやれとする三葉とあはは〜と笑うママと夕陽。さっきの俺たちの友情を返せ!あんなにクサいセリフ言った俺の気持ちを返せ!恥ずかしい気持ちを…追いかけられ愛かけられた俺を返せ!

愛かけられたってなんだ!?このテンパり具合で分かってくれ!


俺たちがママの手の中でポカーンとしていると夕陽は手を叩いた。


「さぁ!しばらくここで生活や!頑張ろっか!」


「いや、直せ!頑張れば何とかなるんじゃないのか!?」


「そないなもん出来るわけないやろ?ここに居るのはパワーに特化しまくった女ですよ?」


ふんっと夕陽が腕に力を入れると余裕のあったはずのスーツがギチギチになっていた。他のみんなも同じ状況で姉さん達以外はスーツの腕がピチピチになっていた。


「ん〜!サイドチェストー!」


「やらんでいい!」


「私もやった方がいいのかな?」


「葵依姉さんは貧弱だからやらなくていい!美衣姉さんも!」


「「えぇ〜」」


「えぇ〜じゃない!怪我するよ!?」


俺たちがはしゃいでいると何やら外からバサバサという音や車の音が聞こえる。窓を見てみるとそこにはヘリコプターがこちらに向かっているのと入口には車が止まっていた。

それを見た七星の人達は騒ぎ始める。


「まずい!アキラくん!情報をかぎつけられた!」

「私たちは入口に行くから、君たちは部屋の中へ!」

「三葉!君はこの家族たちを…姉さんたちだけを守りなさい!」

「はーい!頑張ります!」

「みんな武器を持って!入口組と屋上組に別れて守りましょう!」

「「「「「では!健闘を祈ります!」」」」」


ビシッと敬礼すると一花、三葉以外の七星が銃を取りだし走り出した。一花たちも敬礼をし、彼女たちを見送っていった。

だが、木乃恵は何故か敬礼をせず俺の方を見ている。なんなんだ?木乃恵さんよ?

行かないのかい?って言って欲しいのかい?


「私はほら!アキラくんのボディーガードだから!」


「………(心を読むな!)」


「無言やめて!とりあえず橘さんのいる部屋に鍵をかけてっと…隣の部屋に入りましょう!」


木乃恵は血のようなものが付いたカードを扉にかざすとガチャッと音が鳴る。せめて血は拭え!

重そうな扉を開けると俺たちは中に入る。ママたちは部屋の中を探索する中、俺は座布団を枕に横になる。


「はぁ…ここからどうなるのかね〜」


「アキラ、お疲れのようやね。ほい、お茶。調べたから大丈夫やわ」


「おっ…よいしょっと…ありがとう…うめぇ!」


「ほんで?どないしたんよ?黄昏たそがれて」


俺は夕陽にこの先にこういうことをしてみたいという話をする。その間にママたちは探索を終えたのか集まってきた。


「ほーん、全世界にアキラのことを周知させるとはね〜なかなか考えたもんよ。ばらまかれたから自分からばらまいたらええって考えるのは出来んもんよ?」


「まぁ出来ることはこのくらいしかないからな。頑張るか〜」


呑気に話していると外がバタバタと騒がしい。恐らく七星の人達が戦っているのだろう。

俺たちはのんびりしててもいいのだろうか?


「さてと…ほな…うちも行くかぁ…」


「じゃあ私も行くわ」


ママと夕陽が立ち上がり、首をゴキゴキと鳴らす。

これは…どっちの心配をすればいいんだ?

ママは赤目の死神で夕陽は青目の侍?


「ウチらの心配は要らへんで?」


「えぇ、扉の前は任せて。夕陽はほかをお願い」


ママは手をゴキゴキと鳴らしながら、赤目の死神が現れる。怖ぇ!直に見れてないからこれは怖い!


「ええで?そんなオーラ出してたら近寄られへんやろうしな〜まぁ殺さんかったらええんやろ?」


「ええ、加減はいらないわ。かかってくるやつの腕の1本や2本ぐらい引きちぎりなさい」


「それは…死ぬやつでは?」


「ほな!行ってくるで!まぁ数分で終わるから大丈夫やで!よっしゃ!行くか!」


「よっしゃ!久々の戦い!ゾクゾクするわね!」


そう言うと扉を開けて出ていく。悲鳴や何かが爆発する音が聞こえ、俺たちは身を寄せあって怯えていた。


「あ、あれがママたちの…」


「私はあれにはなれないかな…あれ?私の中に何か…」


「やめて!一花!こんな所で覚醒しないで!」


「「ママ…怖いね…」」


「い、いやぁ〜あれはすごいね〜私もあんな感じになれたら…面白そう…えへへ」


じゅるりとヨダレをすすった三葉と何かに目覚めそうな一花、俺にくっついて離れようとしない姉さんたちに挟まれた俺は身動きが全く取れない。

木乃恵に助けを求めているが、無視されている。


「覚醒2名出現!やめて!俺が死ぬ!」


「しっ!…外、終わったのかもです…」


木乃恵は扉を静かに開ける。だが、先程まで聞こえていた悲鳴や爆発音が一切ない。

早くない?

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