暗い雰囲気から…


「アキラ!大丈夫!?体調は!?吐き気とかしんどくはなってない!?」


「あぁ平気だ。あぁ…そうか…あの人は…」


「考えちゃダメ!私がそばに居る!考えるのはもうやめて!」


俺は一花に強く抱きしめられると同時に一花のすすり泣く声が聞こえた。お世話になった人が裏切った挙句に目の前で死んだかもしれないんだ。そりゃそうだ。


「一花…いいか?」


「何?アキラ」


「俺に前世の記憶があると言ったな?」


「ええ。聞いたし、ちゃんと覚えてる」


「なら、泣くんじゃねぇ。人はいつか死ぬ。それがいつかは分からない。俺も死んだ。あの人が死んだ時の心構えができてなかったのは仕方ない。

だが、胸を張れ。お前にはあの人の考えを教わったんだろう?あの人は海外に俺を売ったんじゃない。こんな俺がいることを知らしめたんだ。俺たちのやるべきことが今決まっただけなんだ」


「それって?」


「俺を動画で世界に公表すればいい!これが最善の方法だ!」


俺は一花の背中を叩く。一花は体を離すと不安そうに俺の目を見つめる。俺は一花の頬を両手で挟むとおでこを合わせる。


「俺はお前が必要だ。お前は俺の事を必要か?」


「それはもちろん!私はアキラが必要だもの!」


「よし!それでいい!お前は元気が1番だ!」


俺は頬をぺちぺちと叩く。一花は俺の頬を両手で挟み込んだ。これが絆というやつか!いいものだ!

と思っていると俺の唇に唇を合わせてきた。

その間、俺の目を見つめてくるが何故だろう。一花の目が野獣のように鋭く、炎のように目がギラギラしていた。


「…ん…ふふ…これから毎日しようね?」


「え?毎日?」


「しないなら体を噛む砕く。なんなら、夜襲う」


歯をガジガジ噛む一花。毎日せんべいを食べてるあの歯で噛まれたらたまったもんじゃない!これからの成長期のボデイが!俺のボデイが!


「わ、分かった!やる!やるから、元気出せるな?」


「もちろん!よし!これから楽しみ!あの人のおかげだね!」


一花は明るい笑顔を振りまく。これが一番に合ってる!


「やっぱり笑顔がいいな!」


「ふふーん!そうでしょそうでしょ〜!なんか久々に2人で話せた気がする」


「木乃恵がいたからなぁ〜この時間は俺は好きだぞ?」


「あっ…今、トゥクン…ってなった!ねぇ!もう1回!もう1回しよ!」


一花が目をギラギラさせて、俺に近寄ってくる。

俺はまずいと察知し、走り出す。だが、一花は追いかけてきた。白いスーツ着て全力疾走ってるってはたから見たら、やばいだろ!


「うわぁぁ!一花ぁ!落ちつけぇ!」


「待ってぇぇ!アキラぁぁ!」


俺は一花に逃げるために角を利用したり、罠を仕掛けたりしていたが、それらを簡単に対処する。たとて見失ったとしても匂いで見つけてくる。本当の鬼ごっこはこんなに怖いのかと感じた。

俺はある一室に入り、鍵を閉める。


「ここなら大丈夫だろう!」


「…アキラァ〜デテオイデ〜コワクナイヨ〜」


さっきから声が機械のように怖いんだ。

最初は鬼ごっこみたいだった。そこからだんだん捕まえたら、何されるか分からない状況にまでなった。早くママたちのいる部屋に行きたいんだが?


「ふぅ〜…怖いねぇ!あれが本性か?」


「…ココニイルネェ〜デテオイデヨ〜」


ドアをコンコンと叩く一花。俺は心臓が跳ね上がり、息を止める。


「…チガウノカ〜」


トテトテっと歩いていく音が聞こえる。よし!これで俺は大丈夫だろう。鍵を開けたその時だった。


「ハーイ!アキラ!みーつけたぁ!」


「い、一花!遠くに行ったんじゃ!?…ふぐっ」


俺は一花に抱きしめられることとなり、バタバタと動くが逃げれない。


「ふへへへ…スーハースーハー!…んはぁ!スーハースーハー!…うぅ…うぅぅ…食べたい…食べたいよぉ…」


「人のことを食べようとするんじゃねえ!…むぐっ…ん〜!」


「ん〜!美味!もっと欲しい!」


「や、やめろぉ!うわぁぁぁぁぁあ!!!」


しばらく一花に弄ばれ、口が腫れ上がり、ゲッソリした俺とツヤツヤした一花は手を繋いでママたちのいる部屋へ戻ることとなった。


「一花よ、貴様に命令だ!1週間醤油せんべい禁止だ!暴走しやがって!」


「ごめんなさい!醤油せんべいだけは!醤油せんべいだけはやめて!」


「許さん!塩せんべいでも食べとけ!」


「やだぁぁ!醤油せんべいぃ!」


癇癪を起こし、俺の手を強く握る。

少し痛いが我慢すればいい。


「今回は許さん!暴走したのと雇用主を傷つけた責任だ!塩せんべいだけ食べるんだ!もし醤油せんべいを食べてるのを見たら、1ヶ月に延長だ!」


「…見たら?見てなかったら食べていいってこと?やったね!」


「クソっ!言葉選びをミスった!」


俺たちがワイワイと騒いでいるとママたちは部屋の外で待っていた。

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