万事休す


俺たちは携帯の方へ向かうと薫ちゃんママの安否をママが問うた。


「大丈夫!?薫ちゃんママ!」


『え、えぇ!大丈夫!奴ら、私の家に来たわ。みんなはそのまま静かにしておいて!…あぁもう!はいはい!今向かいます!』


薫ちゃんママが携帯から離れていく。俺たちは少し待っていると扉が開いた音と何人かが入った音が聞こえる。その音が聞こえた俺たちは体が強ばる。


『こんにちは〜お姉さん。おい…他の部屋調べてこい』


『『『『へい』』』』


『ちょっと!部屋を荒らさないで!』


『ここに男が居らんか確認するだけや。居らんかったら時用の手土産ぐらいあるわ。すまんけど時間貰うで』


『…わ、分かったわ』


関西弁で喋る女の声と薫ちゃんママの声が聞こえる。かなりドスの効いている声だ。薫ちゃんママは少し声が震えている。


「物騒な奴らだな…」


俺は歯を食いしばる。それを見たママたちは少し驚いていた。


「…アキラはなんで怯えてないの?」


「そりゃママたちがいるからだよ。もし俺がビビっていたら、男が廃るしな!一花!銃を用意しておいて!なにか武器を持ってるかも!」


「オッケー!任せて!皆殺しにしてやんよ!」


「いや、それは…まぁいいか。木乃恵〜いつまで寝てるの〜?起きろ〜?」


俺は椅子で気絶している木乃恵の頬をペチペチと叩く。うぅん…という声を出しながら、目を開ける。


「…あれ?幸せの拷問は?」


「そんなの聞いたことないぞ?早く準備せい!」


「いぃや!これはまだ夢だもん!頬っぺにチューしてくれたら起きるけど〜…はい!」


チラッと期待したように俺の方を見る木乃恵。頬を差し出し、早く早く〜!というように顔を動かす。


「…一花、頬に穴が欲しいみたいだ」


「…これで後を残してあげようかな〜」


「待って!銃のキスは要らないから!分かったから!早く解いてよ…ぐすん…もっと優しくしてくれてもいいのに…」


「「日頃の行いを考えなさい!」」


「うぅ…私をいじめないで〜…」


うぇぇぇん!と泣き出す木乃恵。

まぁ嘘泣きだがな。さっきからチラチラ見てきているんだ。

そんなことを無視して、木乃恵の拘束を解除する。


すると、地下室の入口がドンッ!と踏む音が聞こえ始めた。俺はすぐママたちの手を掴み、椅子の方へと引っ張る。

一花たちは音に反応し、電気を消し、入口の方に銃を向けていた。


『あん?何だこの床は?普通の床とはちゃうな…』


女の声が聞こえた俺たちは身構えていると再びドンドンッ!と聞こえ始める。入口の方がミキミキと音を立てているため、かなりの力で踏んでいるのだろう。

しばらくすると音が止み、声が聞こえた。


『…まぁこないな所に居るわけないか。地下室なんてもんがあったら、うちらが来た時点で逃げとるもんな。逃げへんってことはただの収納やろう』


俺たちはその声を聞き、ホッとできると確信できたと思っていた。その次の言葉を聞かなければ…だった。


『念の為に破壊しておくか。おい!』


『へい、準備は万端です』


『よっしゃ!ほなドリルで真ん中ぶち開けたれや!』


その時、俺たちがとった行動は一つだけだった。

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