束の間の団欒
「「「アキラ、この現状は何?」」」
ママたちが地下に入って開口一番に開いた言葉はこれだった。
そりゃそうだろう。なぜなら木乃恵が椅子に括り付けられた状態で一花と俺がその前に立っていたからだ。
「この人が悪いんだよ。だから、気にしないで」
「そうです。お気になさらず」
「そ、そう?それで私が見た外の状況はこんな感じよ」
ママはこちらに携帯を向けると何やら屈強な女性が電動工具のケースを持ち歩いている写真だった。
「なんだこれ?」
「多分、窓を割るために使うんでしょう。こっちに避難出来て良かった」
「ほんとにそうよ。薫ママがいて良かった」
葵依姉さんは大きくため息をつく。もしあの家にいたとしたら、ママ達はどうなっていたのだろう。
もしかしたら死んでいたかもしれない。
そんなことを考えたくもない。
「良かったね、アキラ。これで安心ね」
美衣姉さんは俺の方を向いてニコッと笑ってくれた。まるで女神の微笑みだ。この笑顔に俺はいつも助けられているような気がする。
すごくありがたい。
「まずは薫ちゃんママと通話しておこう」
「そうね。そうしましょう」
ママは薫ちゃんママに電話をかける。ワンコールもしないうちに電話はつながった。ママはみんなに聞こえるように携帯を設定した。
『もしもし?ママさん?どうしたの?』
「外の状況はどう?薫ちゃんママ」
『あ、アキラくんなのね。
ちょっと小声でごめんね?今、アキラくんの家に何人か入っていったわ。あの窓を電動工具を使って割ってね。すごい音だったから、今静かにしているの』
「あれ、割れないはずだけど⋯」
『たしかインパクト系だったと思うよ?あの地面に穴あけるドリルね。すごい音だったよ?』
「そんなに男が捕まえて何になるんだ?」
『さぁ?今、アキラくん家だけだし大丈夫だと思うけど⋯もしこっちに入ってきても私が対応すれば大丈夫だと思う』
「⋯何かあった時はお願いします」
『任せて。通話はそのままにしておいてね。コンセントもあるし充電出来るはずだよ?』
「ありがとう。それまでは家族で話しておくよ」
「分かった。しばらくのんびりしてて?とは言ってもできるかは分からないけど」
薫ちゃんママは携帯から離れていく音が聞こえ、俺たちは少し困惑している。
「まさか⋯そこまで本気なのね。あの保護会と解放会が結託する上に一部の警護人も結託してるのよね?」
「確かそのはずよ?ここにいる2人は大丈夫。1人は別としてね」
「⋯姉さんがすみません」
「この際、別にいいわ。ただ警護人が無くならないかよ?」
「⋯おそらく解体されてまた別の形になるかもです」
ママと一花、美衣は深刻そうな話をしている中、俺と葵依姉さんは木乃恵のことを話していた
「どうしてこんな状況になったの?」
「俺に許可なく寝顔を数十枚撮ってたから、拘束して消した」
「あぁ⋯なるほどね。この充電コードは?」
「あそこにあるカバンに入ってる」
俺は壁側に指を指すと大きなカバンが転がっている。カバンの隙間からゲーム機や貴重品、ちょっとした食料が見える。
「あ、通帳!良かった〜盗られたと思って心配してたのよ!」
「この俺が忘れるわけないだろ?全員の分、ちゃんと持ってきますって!」
「アキラはほんとに賢いわね!5歳と思えないわ!」
俺たちがキャッキャしていると携帯の方から何やら騒がしい音が聞こえ始めた。
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