執行


「木乃恵⋯警護人、なくならないか?」


「可能性はあるかもです」


「つまり、木乃恵は⋯」


「やめてください!ノージョブだけは!嫌なんです!」


木乃恵は頭を抱え、仰け反る。

それよりも最後の文章はまずいだろう。


「木乃恵、最後の文章だけ読んでくれない?」


「え?『私たちの場所がバレている模様』⋯まずいですね」


「だよな?どうしよう⋯」


「薫ちゃんママに頼みます?」


「ダメじゃない?バレ⋯」


俺たちが会話していると携帯がなり始めた。

俺は携帯を出ると薫ちゃんママだった。


『アキラくん!こっちにとんでもない数の女の人達が向かってるみたい!多分アキラくん家に行くんじゃない!?私の家に地下があるから早くおいで!警護人の人も早く!』


「地下!?そんなものがあるんですか!?分かりました!と⋯えと木乃恵!ゲーム機を何個かと食料、あと貴重品をカバンにいれて!早く!」


「は、はい!」


『あともう1人の警護人さんにも早く言っておいて!あなたのママにはもう連絡してあるから!早くした方がいいわ!』


「分かった!急いでいく!」


俺は電話を切ると片手で携帯を持ちながら、貴重品を探して木乃恵に渡す。木乃恵は少しだけ汗をかきながら、重そうなカバンを持ち上げる。


俺たちは急いで外に飛び出すと遠くの方から誰かが走っているのが見えた。その人影は白いスーツを羽織っていたため、一花だろう。俺は手を振ると『早く行け!』と指を指してきた。


俺たちはそれに従い、隣の家へと飛び込むと玄関の前に薫ちゃんママがいた。じっくり見たいところだが、そんな暇は無い。


「お久しぶり!地下室は開けてあるから!」


「ありがとうございます。木乃恵、行こう」


「はい⋯少しだけ嫌な予感がします」


「そうか?警戒だけはしておくか」


俺達は家の床にある地下室に入ると電気がついており、部屋の中心に1つの椅子があった。なぜ一つだけ?


「じゃあ地下室は閉めておくから!白いスーツのもう1人とママさんが来たら開けるからね!それ以外は開けないよ!」


「分かりました。ありがとうございます」


ガチャリという音が聞こえ、俺が床を押すと動かない。完全に誰も入ることはないだろう。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「さて、木乃恵。君に話がある」


俺は木乃恵の手を掴み椅子に座らせる。

そして、カバンから充電コードを取り出すと手足を椅子に括りつける。それはまるで何か秘密を持った人を捕まえたかのようだった。


「あの⋯どうするつもりですか?」


「何もしないって」


「こんなところで⋯」


木乃恵は顔を赤くするが、残念ながらその顔は真っ青になるだろう。


「⋯君に質問があるんだ」


俺は木乃恵の横に立つとあるものを木乃恵の顔に近づける。


「これは一体なんなんだ?」


俺の手には携帯があり、電源を入れると俺が寝ている時の顔がアップで撮られている写真があった。


「そ、それは⋯」


「いつ撮ったんだ?」


「し、知らない私は!なぜ携帯にそんなものがあるんです!」


「そうか⋯白状しないって言うんなら俺にも考えがある」


俺は木乃恵に携帯を向け、写真を撮る。そして、あるメッセージアプリを開くとアバターの写真を選択する。


「さて、白状しないと言うならばあなたの恥ずかしい姿が公表されることになる」


「くっ⋯」


「さぁどうする?」


木乃恵は少し考えるとポツリポツリと話し始める。


「それは⋯私が添い寝してる時に撮りました⋯」


「ほぉ?それで?」


「それで⋯楽しんでました」


「どんな風に?」


「それは⋯」


さっきまで顔が真っ青だったのが段々と顔が赤くなっている。

俺は木乃恵の後ろに立ち、肩を掴む。


「ならば、この携帯の写真を消しても良いだろう?楽しめたのだから」


「や、やめてください!それだけは!」


椅子をガタガタと震わせ、俺の携帯を取ろうとする。だが、手足を拘束されている上に俺は背後を取っているので何をしても無駄だ。


「ダメだ。ならばあるものを俺に渡せ」


「え?」


俺は背後から木乃恵のスーツのボタンを外す。そして、スーツの内側にあるものに手を伸ばす。


「そ、それはダメです!」


木乃恵がガタガタと抵抗する。だが、俺は片腕で木乃恵を抱きしめることで黙らせる。


「黙れ。俺は気になってるんだ」


木乃恵の内側にある二丁のうち一丁を取る。


「この銃、なかなかいいな」


「えぐ⋯汚されました⋯乙女の純情をなんだと思ってるんですか?」


「だから、抱きしめて近くで見てるんじゃないか。で、弾入ってる?」


「えぇ⋯それはもちろん。正面に座ってもらえればもっと教えますけど⋯」


「おぉ〜!じゃあ座るか!」


俺は木乃恵の膝の上に乗り、向かい合う形で座る。


「で、どうすんの?」


「⋯これはダメです⋯」


木乃恵は鼻血を流すと気を失った。

ぺちぺち叩いてみるが起きない。


「おのれ⋯自分の欲望に忠実になりやがって⋯」


俺は遠慮なくスマホを取り出し、携帯の画像を削除する。銃は仕方なく、元の位置に直していた。


しばらくすると一花、ママたちが地下室に入ってきたが木乃恵は一向に起きなかった。





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