事件の幕開け
「あら?起きたの?アキラくん。まだゆっくり寝ててもいいんだよ?」
声の主は木乃恵で俺を抱きしめながら、頭を撫でる。俺はもう一眠りしようとしたが、段々と息が苦しくなってきた。お腹をぺちぺちと叩くが反応はない。俺は木乃恵の方を掴むと上に登る。
木乃恵の顔と近いがそんなことはどうでもいい。
「息ができない!」
「あっごめんなさい」
木乃恵は俺のことを抱きしめる力が段々と強くなっていることに気づかず、自分の胸で俺の鼻を塞いできた。俺の事を殺す気か!
「あ、そうそう。今日は新しい園から連絡来たよ!今回は幼稚園!他の子供たちも一緒らしい!」
「それ…布団の中で言うことか?」
「だってぇ…私、眠いんだもの…」
「今日行くんじゃないの?」
「今日は…休みでいいって⋯」
「そう?…じゃあ…寝よっかな…」
俺は少しだけ下に下がると目を瞑る。木乃恵は優しめに抱きしめるとゆっくりと呼吸し始めた。
俺ももうすぐ眠りそうなところで勢い良く、扉が開かれる。扉を開けたのは一花だ。
「起きて!外が変よ!」
「「…はぁ?」」
「いいから!特にアキラ!あなたはあの頑丈な服に着替えて!姉さんは武器を持って家の中に居て!私は外を見てくるから!」
「え、えぇ…任せて」
「…分かった。木乃恵のそばに居る」
一花は俺の返答を聞くと窓から外へ飛び降りて行った。せめて玄関から行ってくれる?危ないからね?窓は外に行くために作ってるわけじゃないからね?
「…もう…眠いのに…」
「仕方ない…起きようか…」
俺達はノソノソと立ちあがり、窓を閉める。そして、いつもみんなが集まる部屋へ行く。だが、その部屋には誰もいない。
カーテンも閉まっており、ほかの人たちは寝ているんじゃないかと思うほど静かだった。
「あれ?誰もいない」
「じゃあゆっくり寝れますね〜」
「寝たいけどダメ」
「えぇ〜寝ましょうよ〜」
「ダメ!⋯テレビつけるか」
俺はテレビの前に座ると木乃恵は俺を持ち上げ、自分の太ももの上に座らせる。何やら背中に顔を埋めているようだ。寝る気だな!
あと俺はクッションじゃないぞ!
仕方なくテレビをつけると何やら多くの女性がバットや鉄パイプを持って、道路を闊歩している光景が目に入った。
「本日、解放会と保護会が結託し、男性を誘拐する事件が発生しました!
男性の皆様、嫌だと思いますが今すぐ警護人の近くに居てください!現在!解放会と保護会が結託!男性を誘拐しております!誘拐された男性は服を脱がされ、拘束されているとのことです!今すぐ逃げてください!警察も対処しておりますが、かなりの数です!警護人も出動されております!今すぐ逃げてください!」
と、女性アナウンサーが声を荒らげている。
一花が向かった理由はこれか⋯て、男性を誘拐?
「「おっとぉ⋯これはまずい」」
「でも、俺の家の窓って合わせガラスで結構頑丈だし、扉も頑丈だよな?」
「はい。外には警護人⋯あっ警護人が向かったんじゃ私だけですね」
「「⋯⋯⋯着替えよう」」
俺達は別々の部屋に別れて、服を着替え始める。
俺は何かの用心の為にと買っておいた大容量激辛スプレーを手に取り、テレビの元へと帰る。
「結託って⋯何したんだよってあれのせいか」
あれというのは保育園での1件だ。男性を保護しているはずの政府が全く保護できていないということで信用が崩れたのだろう。その結果、今日の事件が起きることとなった。
「まぁ我が家には来ないだろうな」
すると、インターホンがピンポ〜ンとなった。
俺は一応見てみるとそこにはママたちが居た。
俺は通話ボタンを押そうとすると、木乃恵に止められた。
「先程、連絡がありまして『私たちは外の警戒をしておく。家に入る時はインターホンを鳴らさない。静かに入るから、何かあっても出ちゃダメ』との事です」
「え?じゃあこの人たちは?」
「多分ですが⋯」
木乃恵はモニターボタンを押すと外の声が聞こえ始めた。
『ここら辺で男をみたってやつがいるのよね』
『そう?でも、この家は見た感じ誰もいなさそうだけど?』
『じゃあほかの店を調べていこう』
『『賛成』』
ママによく似た人達はそのまま隣の家に歩いていった。
「ほんとに違うみたいだ」
「はい。よくある手口です。知り合いに扮して家に来るんです。男は基本的に家族が家に宅配をします。基本的には警護人がいるなら、警護人が出るんですが⋯いない場合は出ないで置いた方が安全です」
「な、なるほどね⋯それよりこれからどうしよう」
「ひとまずゆっくりしましょう。ゲームでもなんでもいいですし、ここは防音対策もバッチリですし」
「なら、ゆっくりゴロゴロするかぁ〜」
俺は床に寝転がり、しばらくボーッとする。その横木乃恵が寝転がってきた。
「眠いですね〜」
「まぁね〜」
すると、窓の方からコツンッと音が鳴った。木乃恵はめんどくさそうな顔をしつつもカーテンの隙間から外を覗き見る。
「何か向かいの家から手を振ってますね。どなたか分かります?」
「ん?⋯⋯誰?⋯あれ?もしかして薫ママ?」
なんと向かいの家に薫ちゃんのママが窓から手を振っていた。
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