慌ただしい日
「あなた!もう逃がさないわ!」
俺は何故か玄関で胸ぐらを捕まれ、体を持ち上げられている。
「何が!?俺は何もしていないだろ!?」
家に帰ると彼女が待っていたが、持っているものは包丁だ。それを今、俺の首に押し当てている。
俺は仕事をしてただ帰ってきただけだ。
「あなたが家に入っていったのを見た人がいるの!」
「俺はずっと会社で仕事してただけだぞ!?」
「もうあなたなんて信用出来ない!あなたを殺して私も死ぬわ!」
「やめろ!…やめてくれぇ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「うっ…あれ…ここは?」
目が覚めたら、何か見覚えのある光景と誰かが抱きついている。俺はそれを見ると、イオちゃんが俺の胸の中で眠っていた。
「あぁ…着いたのに俺は寝てたのか…ん?なんだ?」
俺は体を起こそうとする。しかし、外がやけに騒がしい。バタバタと足音が聞こえたり、何やら悲鳴のようなものも聞こえる。
「ま、まさか…ゾンビ…いや…そんなわけない…よな?」
俺は落ち着いて周りを見ると他の人はみんな寝ていた。寝相の悪い子は布団を蹴飛ばしており、隣の子から布団を奪っていたり、仲良く一緒に眠っていたりした。
だが、1つの布団だけ綺麗に畳まれていた。
「だ、大丈夫よな?一花達は?」
「アキラ…ようやく起きたか。私のことは覚えているな?」
「君は…セイ?なんで俺の近くに」
「話はあとだ。今の現状だが、政府の人がここの不正を暴いたことで制圧に回ってる。それをここの警護人が抵抗していることになっているようだ」
「そうなのか。で?何故セイは俺の布団の中に入っているんだ?」
セイとの会話中、俺の布団の中へ入り背中にピタッと引っ付いてきた。耳に吐息が当たってくすぐったいんだが。
「いいじゃないか…それよりも今は寝たフリをしておこう。何か来る」
「ほんとか?」
「あぁ…今、地面の方に耳を当てているがこっちの方に歩く音がカツカツと聞こえる。人数は4人。私たちを攫う気かもしれない。今は眠るふりをしておこう」
俺はセイの言葉に従い、目を瞑る。セイの心音が段々と早くなっている。
もしかして、距離が近いのか…?
俺はそれに対し、恐怖感が湧いてくる。
目をギュッと閉じると扉を開く音が聞こえる。
「ここがあの子のいるクラスか」
「はい。私の専属の人が居ます」
その声は一花の声と知らない女性の声だった。俺は振り向きそうになったが、セイがそれをさせまいと体を密着してくる。
「そうか…ほかの警護人の様子は?」
「はっ…もうまもなく制圧完了致します」
木乃恵も一緒にいたのか、ということはこの人は木乃恵よりも立場は上ということだ。
「ここの子達に悪い事をしたな…私が知っていればこんなことにならなかったのに」
「いえ、私たちにも責任がございます。あなただけが気を病む必要は無いかと」
「そうか…では、命令だ。捕まえた警護人は全員刑務所にぶち込め。二度と外に出すな。それとここの責任者が居るはずだ。そいつを絶対に生かして捕まえろ。今回の件で責任を問いつめてやる」
「「はっ!」」
その言葉に一花と木乃恵は外へと出ていく。
偉い人は俺の方に近づいてくる。
俺は夢の記憶を思い出し、恐怖で口の中が渇くき始める。俺は恐怖のあまりだんだんと意識が薄れていく。
「すまないね。坊ちゃんとその他の子達、ここにはもう来れないけど新しい保育園を作るからね。大丈夫、今度はとてもいい場所になるよ」
俺の頭を撫でるとその人は出ていった。
「………」
「行ったか…大丈夫か?アキラ…アキラ?」
俺はそこからの記憶が無い。
気がつけば俺は自宅におり、起きたらほかの園児が俺のベッドの中で眠っていた。
起きた俺はその状況を理解出来ず
「なんだ夢か…」
と考え、もう一度眠りについた。
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