第2の訪問
朝、眩しさで目が覚めると隣にいたはずの一花と木乃恵は居らず、俺一人での目覚めだった。
だが、何かがおかしい。体が妙に暑い。
体を触ると俺は服を着ている。
「…あれ?なんで服着てるんだ?たしか脱いだはずじゃ…」
俺は疑問符を浮かべていると窓の方から声が聞こえた。
「アキラ、おはよう。ゆっくり眠れたかしら」
そこには窓の縁に座り、本を読んでいるママがいた。いや、危ないって!
「…ほんとに何してるの?ママ」
「アキラが起きるまで本を読んでいただけよ」
ママはパンッと本を閉じる。その時、少し風が家の中に入る。ママは片手で自分の髪を押さえて外を見る。
「今日の風は気持ちいいわね」
髪の毛が舞い上がるその姿はまるで美術館にある作品と思うような美しさがある。
俺はそれに見とれてしまっていた。
「アキラ、保育園に行かないといけないでしょ。服は着せたからあとはご飯食べて行ってね…ちゅ…じゃあ私は仕事に行ってくるからね!」
ママは俺の方に近づき、頬にキスをするを外へ出ていった。俺は頬を擦りながら、体を起こす。
「…起きるか」
俺は布団から出るとみんなのいる部屋へと歩き始める。
「おはよう」
「「「「おはよう」」」」
みんなは朝ごはんを食べながら、挨拶をする。
木乃恵と一花はパン、姉さん達はご飯だ。
テーブルには俺の分の朝ごはん、メロンパンとチョコパンが置いてあった。
やっぱり1人多いな。
「木乃恵よ、何故和んでる?」
「え?私の家はここじゃ?」
「契約していないんだが?」
「まぁいいじゃないですか!」
「なんで家族の一員みたいに我が家にいる!寝室にも居たな!」
「「それは聞いてないけど?」」
「ちょっ…それはみんなの前で言わないでください!」
「これはお話が必要ですね〜?ねぇ?木乃恵さん?」
「私もまだ添い寝できてないのにやってるってどういうこと?」
「あっ…きょ、今日のご飯は唐揚げがいいな〜…」
「そう…じゃあ木乃恵さん、唐揚げ粉を50個ほど買ってきてください」
「木乃恵さんが唐揚げです」
「ごめんなさい!一花に言われて!アキラくんがうなされてるって聞いて!」
「一花さんは別にいいですが、あなたは別です」
「そんな不公平な!」
朝から姉さんと一花達はワイワイしている中、気配を消し、パンの元へ行き静かに食べ始める。
うむ!このメロンパンは美味い!
「みんな〜急いで〜!もう時間よ〜」
「「「「うわっ!まずい!」」」」
「ったく…喋りすぎだよ…さっ!歯を磨いて行くか!あの保育園に」
その時、俺の脳裏によぎる!
ゾンビのように襲ってくる女たち!それを
「…大丈夫…だよな?襲う…とかないよな?」
俺は保育園に行く前に一抹の不安を抱えることとなった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「さぁ!保育園ですよ!」
「あぁ…うん」
「もっと元気だせよ!熱くなれよ!」
「いや〜無理かなぁ〜」
木乃恵はやけにテンションが高いのに対し、俺はその逆だ。やっぱり夢のせいか襲われて食われるんじゃないかという謎の不安が脳裏から離れない。
一花は俺の方を見ると、俺の手をそっと触る。
「もしかして…昨日うなされてたのって保育園でのこと?」
「そう。園児たちが襲ってくる夢を見てね。警護人はその時にはもう倒されてたみたいで、最後は首を噛まれて夜に目が覚めたんだ」
「そうなんだ。でも、大丈夫。私たちが守るから」
(君が襲ってきたんだよなぁ…とは言えないよな)
「ありがとう。頼りにしてる」
「チッ!イチャイチャしやがって…!」
「これは私の特権ですから!」
何故か張り合っている一花と木乃恵、俺はそれをよそに外を見る。
空は青く、所々に雲がある。しばらく見ていると眠気に負けてしまい眠ってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「よいしょっと…起こさなくていいんですか?」
私は車から降りるとアキラを抱き抱える。保育園に着いたのだが、一向に起きる気配がなかった、
1度起こそうとしたが、木乃恵姉さんが止めた。
「寝る子はよく育つと言うでしょ?それに悪夢でうなされてたんだし、ゆっくり寝かせてあげなさい」
「分かりました…周りのことは任せます」
「ええ…それじゃあ行きましょうか」
木乃恵はポケットから銃を取り出すと先頭を歩き始めた。その後を私がついて行く方になった。
しばらく歩いていると園児たちの声が聞こえ始めた。その中に男の子の悲鳴のようなものも聞こえるが、1つおかしいことがある。
「待って!…なんで園児が外にいるの?今の時間は出ちゃダメのはず…」
「まさか…アキラが言っていたことは本当に?」
何故か園児たちが数人、部屋から出て遊んでいるのだったが様子が違う。
男の子は遊びに付き合う形になっているが、実際は服を引っ張られ脱がされそうになっている。悲鳴をあげて助けを求めているようだ。
園児たちはそれを笑いながら行っており、貞操帯をつけていなければ襲われていただろう。
だが、周りの警護人は無視をしており、何もしない。
「助けないといけないのに…なんで?報告と違うじゃない」
「これは連絡しましょう。最悪潰せばいいですし、あの警護人達も永久追放でできますし」
「そうね。申し訳ないけどあの子は後で助けましょう。それよりもここはダメね。回り道をしましょう」
「そうですね。まずはアキラをあのクラスへ」
私たちは園児たちに気づかれないように回り道をし、歩き始める。
「アキラ…大丈夫だからね。絶対に守るからね」
アキラは園児たちの声を聞き始めてから少し唸り始めた。また悪夢を見ているのだろう。
木乃恵もアキラのことが心配なのだろう。チラチラとこちらを見ている。
「んん…うぅ…う〜ん…」
曲がり角を曲がると園児たちの声は聞こえず、私たちの足音しか聞こえない。遠くには大きな扉がある。あれが目的地だ。
「もうまもなくあのクラスへ到着するわ。アキラのことを任せるわ。私は上へ連絡してくる」
「分かった。私も中に入って確認する。状況把握後、そっちに連絡する」
「分かったわ。出来れば写真もお願い」
私たちが会話していると、クラス前の警護人がこちらに近づく。
「…大きな声は出さないでおきますね。アキラ様ですね。寝ておりますので、あちらの扉を使いましょう。ではこちらへ」
「ありがとう。それとあなたに話を伺いたいんだけどいい?」
「もしかして…ほかの警護人のことですか?もちろんです。ここは異常ですから。まともな人が極わずかなんです。
では、扉を開きます。あの子たちも居ますが、賢い子達です。大丈夫でしょう。では…どうぞ」
小さな扉の鍵を静かに開ける警護人。私は少し警戒モードに入るとその扉を開けてくれる。
私は木乃恵と目を合わせ、頷くと中へとはいる。
中はかなり広く天井も高い。子供たちの近くには大きな時計がある。周りを見ると警護人はおらず、管理はかなりずさんなようだ。
周りには勉強道具と本が散らばっている。おもちゃはいくつあるがかなり汚れており、誰も触っていない。
警護人は敬礼をすると静かに扉を閉めた。外からは木乃恵と警護人が男の子を救いに歩く音が聞こえた。
アキラが以前来た時とは全く違い、かなり酷い。
そんな中でほかの園児たちは布団で眠っていた。
すると、眠っていたはずの1人の園児が気づいたのかこちらへと近づいてくる。
「…こんにちは。お兄ちゃんは寝てるの?」
私の前に1人の小さな女の子が小声で話しかけてきた。足音は全くしないのはこの子が足音に気を使っているからだろう。
アキラは相変わらずうなされている。
「そうなの。布団借りてもいいかな?」
「じゃあ私の使って?お兄ちゃんのことは任せて。私はイオっていうの。話は聞こえてた。
周りの写真を撮ってお兄ちゃんの傍にいてあげて?お兄ちゃんはあなたを信用しているみたい。
私たちの時と全然違うもの。無理してたのが今になって来たのかも…ここはもうダメだから」
女の子は少し泣きそうになりながら、自分の布団にかかっている掛け布団を捲り上げる。私は布団の上にアキラを乗せると掛け布団をかけてくれた。
「わかったわ…私もこの状況には耐えれないもの」
「助けてお姉ちゃん。私達と他のみんなを」
「任せて。これは七星として許せない」
私は無音カメラを起動させると周りを撮る。
イオはアキラに近付き胸に顔を押し付けた。
アキラはそれに応えるように強く抱き締める。
驚いていたが、声を殺しているイオの目には涙が溜まっていた。
「さて…私たちを怒らせるととんでもないことになるのにね」
私は木乃恵に写真を送ったあと、ある人に連絡をすることにした。
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