7人の濃いメンツ
「あなたたちはどうやって鍵を開けてるんですか!だいたい…」
俺たちの前には7人の子供がその場で正座させられている。女性は子供たちを叱っているが、子供たちは知らんぷりをしている。
ただのイタズラ好きの子供かこの女性がちょっと抜けてるのか…俺は周りを見渡す。
いくつか窓があるが、鉄柵で守られている。扉の割には思ったよりも広くなく、15人くらいで遊べるぐらいの広さだ。
床にはクッションが引いてあり、滑り台や積み木、本やクレヨン、その他の遊び道具が至る所に散乱している。大人は1人いるが、部屋の片付け等は一切しない。ただ座っているだけに見える。
俺はだんだんと子供を説教を見るのが辛くなり、声をかけることした。
「えっとぉ…すみませんがその子たちと遊んでもいいんですかね?連れてこられて早々に子供の説教っていうのはちょっと…」
女性は俺の声に少し驚いていたが、子供たちを解放し、俺の方にお辞儀をした。
「はっ!失礼しました!私とお連れ様は外で待ってますので、存分にお遊びください!ご家族の方は少し施設を周りましょう。少し時間はかかりますが、楽しいと思います。アキラ様、こちらはトランシーバーです。何かあれば私に、無理な場合はこの2人に大声で声をかけてください。では!」
「「「何かあったら言ってね!」」」
「何かあればこの一花をよべ!」
「何言ってるのよ!この私!
俺以外の人達は中に入らず、徐々に扉が閉まっていく。俺は手を振ると、みんなが手を振っているのを最後にみんなの顔は見えなくなり、扉からガチャ…という音が聞こえた。
「ふぅ…これでって近っ!?」
俺は子供たちの方へ振り返ると7人の子供が俺の前に居た。少し驚き、1歩下がるが子供たちは1歩詰めてくる。
「へぇ…君がアキラね?」
「なかなかいいじゃない?」
「かっこいい!」
「うむ、なかなかいい男だ」
「優しそう…」
「クンクン…うん、いい!」
「お兄ちゃん?」
子供たちは俺の体をベタベタと触る。そして、引っ張った。俺は体を持っていかれたが、服は破れていない。そのまま地面へと転んでしまった。
子供なのに力がすごく強いんだな…子供だからとも言えるか。手加減なんて知らないだろうし。
「ふーん…そういう事ね」
「どういうこと?」
「やぶれてない…」
「かなり頑丈な服のようだ」
「遊ぼ?」
「服くれないの?」
「私のものなのに…」
子供たちは俺の方へと馬乗りになろうとしてきた。
だが、俺も負けてはいられない。力でねじ伏せてやろう。俺はすぐに立ち上がり、クマのように威嚇する。
すると、7人の中でいちばん小柄な子がやってきた。
「わたち、3歳なの。名前はイオっていうの!」
「イオちゃんか!俺はアキラだ!可愛い名前だな!自分の名前も言えるのか!賢いな!でも、指は2だからまだ2歳じゃないかな?」
「えへへ…でも、3歳なの!2歳じゃない!も〜!!」
イオちゃんは顔を真っ赤にして俺に突進してくる。だが、俺にとっちゃ3歳なんておちゃのこさいさいよ!
俺は逃げないように彼女を拘束し、脇をくすぐる。
「くすぐったい!キャハハハ!」
「ほれほれ〜仕返しだぞ〜!」
「や〜!!楽しい!!キャハハハ!」
「ほれ!高い高〜い!」
「えへへ!楽しい!もっとやって!」
「おう!順番な!」
「うん!アキラにいちゃん!」
イオちゃんは素直に俺の言うことを聞き、少し離れたところに座った。
なるほど。あの子が1番年下か?3歳には見えないんだよな…俺のお腹くらいだから結構小さい。
髪は肩くらい?目も大きいし、年齢を重ねればかなりの美人さんになるかもしれないな!
次に来たのは俺と同じぐらいの背丈の二人の子供。
姉妹なのだろう、瓜二つだ。
片方がポニーテールで、片方は髪を括ってないんだな。それならわかりやすい。
「私はアム。こっちの髪を下ろしてるのがネル」
「よろしく」
「おう!よろしく!俺はアキラだ!かかってこい!」
俺が胸を叩くと2人が走ってくる。
2人は俺に突進するかと思いきや、同時に足を引っ掛け倒してきた。
そして、俺の腕に頭を乗せる。どういうこと?
「何してるの?アムにネル?」
「「腕枕を試してる」」
「訳が分からない…」
「「おぉ…これはなかなか…」」
「何が分かったんだ?」
「「よろしく、アキラ」」
「えぇ…」
アムとネルは俺の腕を少しだけ堪能すると、直ぐにその場から去った。そして、言おちゃんの横に座る。素直な子達だ。
俺は起き上がるといつの間にか前に1人いた。音もなく近づいてきた上に気配もないだなんて…この子は忍びか?
だが、一向に口を開こうとしない。
「どうした?俺の事怖いか?」
「ううん…違うの」
「俺はアキラだ。君は?」
「…ナナ」
「ナナちゃんか。なにかして欲しいの?」
「…撫でて」
「ん?ごめん。聞き取れなかった」
「頭…撫でて?」
「いいぞ!ほれほれ〜」
「…へへ。ありがとう」
「おうよ!
ナナはちょこんとアム、ネルの隣に座る。感情を前に出すのが苦手なタイプなようだな。接していけば変わるかな?
次の人を待っているといつの間にか背中に居た。
だから、なぜ音を置き去りするかな!?
「次、私だね!私はカオリ!匂いかがせて!…クンクン…はぁ…いい匂い!好きぃ!」
「お、おう。俺はアキラだ。後で中のシャツあげるから、今は向こうに行ってね?」
「なんか私にだけ雑い!ぐすん…でも、シャツくれるなら許す」
カオルは涙目だが、ナナの隣に座った。
保育園にいるやつが匂いフェチを開花させているだと!?成長早くないか!?おかしいぞ!?このクラス!?
俺はもう一度姿勢を立て直すと、背筋が真っ直ぐ伸びた子供が歩いてきた。歩き方もとても綺麗だ。
「では、次は私のようだな」
「なんかキャラ濃いな」
「ここの人達はそういう人が多くてな。私はセイという。よろしく頼む」
「おう!こちらこそよろしく!で、どうする?」
「ふむ…ハグをさせてくれ」
「はいよ…来な!」
「……失礼…ぐっ…なかなかすごいな」
「そうか?じゃあちょっと力入れるか!」
「うぉう…恥をさらした…殺してくれ…」
「お前はどこかの騎士か!次するか?」
「…したい」
「じゃあ待ってな」
セイは無言でカオルの隣に座る。
みんなの方を見ると顔を真っ赤にさせていた。りんごかよ!と思うほど真っ赤だったから、俺の方も少し恥ずかしくなった。
「さて、最後のはっと…あれ?どこにいった?」
俺は最後の一人に対処しようと見てみたが、さっきまでいたはずの場所には誰もいなかった。後ろを振り返ってみるが誰もいない。おかしい。
「ん〜?どこに行ったんだろ?」
「ここだよ?」
「え?…足元かよ!?危な!?何してるんだ!!」
「だって…構ってくれなかったもん」
「もんって…名前はなんだ?俺はア…」
「知ってる。私はヤミ。よろしく」
「あ、あぁよろしく」
俺は彼女の顔を見た時、何かを感じた。この子だけなにかが違う。纏う空気というか、目に光がない。彼女の目を見続けていると、吸い込まれていくような感覚に襲われた。このままではまずい…でも、体が言うことを聞かないのだ。
俺はそのままヤミの顔を見つめていると、ニヤッと笑い近づく。俺の後頭部に手を回すと、ヤミの唇が俺の唇に重なった。
「ん…チュ…これで私のパパね」
「…は?」
「「「「「「こら!!何してるの!!」」」」」」
ヤミは俺の胸元に顔を埋め、息を深く吸う。
俺は訳が分からず、ボーっとしていると彼女たちに突撃されることとなった。
一花と木乃恵がクラスに入ってきたのはヤミを守るために抱きしめ、ほかの人たちに殴られそうになったところだった。
なんなんだこのメンツは…ほんとに賢いのか?
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