5歳の俺、保育園へ行く ②


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「大丈夫…大丈夫…」


私はアキラを安心させるため、一定のリズムで背中をポンポンと叩いていた。この子はまだ5歳だけど、頑張りすぎている。

産まれた時から不思議な感じはしていた。私たちの話を聞き、会話をする。本来の赤ちゃんがそんなことするはずは無い。

お腹が空いたり、何かあれば泣くがそれ以外は私たちと会話をしていた。その時、思った。

この子は天才だって…私たちは絶対に守ろうと誓った。けど、実際は守れていない。

この子は私たちが守る前に自分で守る。なんとも情けない状況だ。


「姉さん…すみません…」


「はぁ…私のアキラになんてことするの!?七星の統括みたいだけど、まだまだじゃない!ちゃんとしなさいってあれほど言ったでしょ!?」


「すみません…めぐ姉さんに言われちゃ私もダメダメですね」


私はアキラの顔を見る。アキラはすやすやと私の胸の中で眠っていおり、安心したような表情をし、私の服を掴んでいる。


「この寝顔を守らないとね…」


「えぇ…その前に服を着替えさせておいて下さい。今から行くところはかなり個性的な子達が居て…」


「分かったわ…でも、ガサガサしてる人がいるのに着替えさせるほど馬鹿じゃないわよ?それと何かあったらすぐに帰るから」


「…分かりましたよ。じゃあ家の人たちを呼んで来ます。鍵をかけるので大丈夫だと思いますが、少し用心してください」


木乃恵は車から出て、家の方に向かう。その間に私はアキラを起こさないように離し、服を準備する。


「さてと…久々に着替えさせてあげるからね〜!」


私は手を擦り合わせてからアキラの服を掴んだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


俺が目を覚ますと車は発進しており、ママの胸の中で顔を埋めていた。俺が顔を話すとヨダレが服についていたのだろう、ヨダレがアーチ状に拡がった。その上、服も掴んでしまっていて、少しシワがついてしまった。


「ごめん…あれ?服が…」


「いいの。アキラの服はこっちにあるからね?」


ママはばっちいものを触るかのように指で俺の服を持ち上げる。その持ち方はやめてくれ!


「いやん…えっち!」


「誰がえっちだ!アキラ、もし着替えてなかったらこの服ズタズタに引き裂かれることになるけど大丈夫?」


俺の服は5歳になってから自分で購入できるようになったため、新しく買い、ママや姉さんたちと違って至ってシンプルなものを選んだ。

今回の服に関して、携帯で頼んだものにはなるが何故かサイズ感がピッタリなのだ。そんなものを破かれるとなると嫌だ。着ていた服は1番気に入っている


「いや、大丈夫じゃない。ありがとう」


「どうしたしまして。何かあれば呼ぶのよ?」


「あぁ…そっちも何かあれば呼んでくれ」


「分かったわ。その時はお願いするわ」


((((熟年夫婦か!!))))


このやり取りを聞いていた他の人たちはママとアキラがあまりにも信頼しているかのような言動に心の中でツッコミをいれざるを得なかった。


木乃恵はこのやりとりを聞き、羨ましいと思ったが目の前に真四角の要塞がある。至る所に鉄格子やらがあり、簡単には逃げれなさそうな場所だ。

あれこそが今回の目的地だった。それをみんなに報告する。


「あの要塞みたいなものが保育園です。女の子達がよく脱走するんです。なので、あんな形になってますが中は至って普通の保育園です」


「え?あれが?まるで刑務…」


「それは言っちゃダメです!元はそうだったらしいですけど…」


「やっぱ刑務…」


「あそこは保育園です!」


「いや、だから…」


「保育園です!」


「…あ」


「保育園!」


「はい…保育園です…どんな子達がいるの?」


「愉快な仲間たちかな?」


「そういうことね…個性的ってことね」


「ま、まぁ行きましょう!今回はみんなについてきて貰えますし、いいじゃないですか!次からは1人ですけど…」


俺はその言葉に不安な思いが募る。本当に大丈夫なのか、なにかされるのではないか、あそこからは二度と出れないんじゃないのか…そんな考えが頭に浮かぶ。

みんなは保育園に近づくにつれて、ピリピリとした空気を出し始めた。俺はそれを感じとり、ママの胸元に埋める。俺に危害を加えさせないためにしているのだろう。俺は早く終わって欲しいと願った。


入口前に着くと、ある一人の女性が車の窓に近づく。それに応じたように窓を開けていた。


「お疲れ様です!」


「お疲れ様、今回は御手洗さん家の息子さんを連れてきました」


「かしこまりました!拝見します!…ありがとうございます!どうぞ中へ!」


女性が許可を出したようである仕草をしている。すると、入口は開き、俺たちは中へと入った。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「中異常なし!外異常なし!運転、お疲れ様です!」


「お疲れ様、御手洗さんの息子をここに連れてきたわ」


「お伺いしております!どうぞこちらへ!」


俺たちは降りてすぐ警護人と思しき人が中や車の外を確認していた。盗聴器やGPSがついていないかの確認だろう。その上、来た理由を知っているみたいだ。俺たちはあの女性について行く。


俺たちが大きな扉の前に着くと女性は振り返る。


にのまえ 一花いちか様、獄上ごくじょう 木乃恵このえ様、ここの保育園の説明はなされましたか?」


「「していません」」


「かしこまりました。当保育園ではクラス分けがなされており、上から松、竹、梅となっております。ですが、松より上も存在します。それは特上でございます。

簡単に言うと天才たちの集まりです。この大きな扉はあの子達が簡単に外に出ないようにするためです。人数は7名。年齢は2〜5歳。1度おもちゃを使って鍵を開けて以来、脱走はしておりません。

現在、男の子は他のクラスに数名おりますが、この極上クラスだけは居ないのです」


女性は鍵を取りだし、その扉に差し込む。捻るとガチャという音が聞こえるはずが何も聞こえない。


「あの子達…また開けたの?本ばっか欲しいって言ってたからあげたけど…まさか…」


女性が急いで開けると女の子たちが腕を組んで扉の前にいた。


「「「「「「「ようこそ!」」」」」」」


「あなたたち!またですか!」


彼女達の対面は腕組みからスタートした。


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