保育園から1度目の脱出


「君たち、少し動かないでね?一花、アキラ君を休憩室へ連れていきなさい。男性の保護を最優先にしなさい」

「分かりました!アキラ!失礼する!」


俺は一花に保護という形で極上クラスから回収され、今は休憩室という場所にいる。

俺は何が何だか分からない状況で頭が混乱している。そんな状態を見た一花は俺を椅子に座らせると俺の肩を掴み、揺らす。


「大丈夫か!アキラ!何かされなかったか!?」

「いや、されたのはされたけど…」

「怪我か!?怪我をしたのか!見せてみろ!」

「い、いや…怪我じゃないけど…」

「私が彼にキスをしたのです」


すると、そこにはヤミが居た。木乃恵の目を掻い潜ってきたのか、それとも気配を消してきたのか。それは分からないが、そこにいるのか不思議だった。


「…なにか付いてきてるなと思ったが、原因はお前だったのか。さて、身柄を拘束させてもらおうか」


一花はスーツの下から銃を取り出す。

それをヤミの方へ向けた。ヤミはやれやれといった感じで両手を上げた。


「へ〜…あなたはあの人よりも勘は鋭いようですね。私が軽〜く気配を消しただけで気づかないなんて…あの人は馬鹿なんですか?」

「そんなわけないだろ。姉さんはわざと逃がしたんだ」

「嘘ですね。あの人はそんなに頭が切れる人なんですか?そうじゃないなら今頃…」


「今頃ってどういうことだい?クソ生意気なお嬢ちゃん?アキラに手ぇ出したみてぇだな?」


そこには扉をミキミキと握りつぶしていたママが居た。ママ、本当に在宅ワークなのか?そのパワーはEnterキーを叩くことで培ったのか?


「げっ…なんであなたが…」

「ヤミちゃん?『げっ』って何かな?私に教えて貰えるかなぁ?えぇ?」

「ご、ごめんなさい」

「謝ってちゃ分からないじゃん?ちゃんと説明してみなって」


ママはヤミに近づき、逃げられないように頭を鷲掴みにする。

俺と一花はママが説教している間にこっそりと話す。


『あの子は誰だ?』

『あの子はヤミちゃん。さっきの元凶だ』

『なんだと!?じゃあアキラに…』

『あぁ…あの子の目が少しな。見つめていたらいつの間にか』

『そうか…じゃあノーカンか…』

『あの子の目には気をつけろ。目に光がないんだ?なにか吸い込まれるような感じがして、動けなくなるぞ?』

『分かった…気をつけよう』

『ケガだけはするなよ?』

『それはもちろんだ…あとでご褒美をくれ』

『…いいだろう。期待以上ならな』


すると、俺の言葉に一花の雰囲気が変わる。

ヤミはそれを感じたのか俺に何をしたんだという顔をされた。ただご褒美あげるだけだけどな…もちろん味の濃いせんべいだがな!


「お遊びはここまでだ。ヤミ!貴様を倒す!」

「この私に勝てるとでも?」


いや、そこまではお願いしてないんだけど…急に少年漫画みたいなこと言うじゃん?


「はい、そこまで。今回はお預けよ。アキラ、一花、1度家に帰りましょう。ヤミちゃん?今回のことでかなり怒られるし、しばらくはお家で待機になるわ。その間にアキラは保育園で楽しんでるから、残念ね」


「えっ!?そんなぁ!」


「残念だったな!ヤミ」


「喜んでいるようだが、お前はご褒美なしだ!」


「そ、そんな馬鹿な!」


2人は地面につっ伏すこととなり、ママと俺は泣きそうな一花を連れて車まで帰ることとなった。


今回はママ達が居たから大丈夫だったが、今度からは俺一人でここに来なくては行けない。

ここだと身の危険をすごく感じるから、何とかお願いして一花だけでも連れてこよう。俺は今回の1件で学んだ。


『ママは怒らせると容赦がない。木乃恵は警護人の割には残念。一花はご褒美が絡むと人が変わる』ということに。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ちなみに姉さんたちはどうなっていたかというと


「「「「遊んでよ〜!!」」」」


「え、えっとぉ…早く行かなくちゃなんだ」


「「「「ダメェ!!」」」」


葵依きい、行きなさい。ここは私が」


「ッ!…ごめんね!美衣みい!」


「「「「ダメ!逃がさない!!」」」」


「キャーっ!!やめてぇ!!もうおままごとは嫌なの!」


園児たちに揉みくちゃにされていたそうだ。


俺たちが合流した時にはやつれた顔をしており

『もう二度と行きたくない…アキラ、頑張って!私たちは陰ながら応援する!』

と、第二のトラウマとなったようだ。


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