保育園編

5歳の誕生日だ!


俺は3年間、勉強、遊びを繰り返しいつの間にか5歳となった。


「俺、ようやく5歳になったぞぉ!!」

「「「お誕生日おめでとう!」」」

「ありがとう!ママ!姉さん達!」


ママや葵依きい姉さん、美衣みい姉さんは俺の5歳を祝ってくれた。机の上にはケーキと5つの火のついたロウソクがあった。

一花はせんべいを食べてゴロゴロしていたが、静かに近寄り、ロウソクを消してきた。


「フゥ〜!早く食べるぞ!」

「なっ!一花!やりやがったな!」

「早く食べるぞ!」

「お前には失望したぞ…褒美を…」

「わ、わかった…!ほらっ!ちゃんと誕生日プレゼントは用意してるから!早く渡したかっただけなんだ!」


一花はポケットの中から何かのバッジを取り出した。それはオリオン座が描かれている小さなバッジだった。


「それは七星の専属警護人の証。それをつけておけば身の危険があったとしても大丈夫だ。それとそれは保育園に行く時の証にもなるから、つけ忘れには注意しろよ」


「おうよ!ありがとう!」


俺はそのバッジをつけようと自身の服を少し持ち上げる。すると、ピンポーン…という音が機械から聞こえた。

ママはインターホンに向かい、通話ボタンを押す。


「はーい!」

『木乃恵と申します〜!アキラくんいますかー?』

「あっ!はーい!開けます〜!」


と、ママは足早に玄関の方へと向かう。

俺と一花、葵依姉さんは顔が青ざめていく。あのトラウマが蘇ってきてしまったのだ。


「アキラ?大丈夫?」


「あ、うん。ありがとう美衣みい姉さん。ちょっとね…」

「アキラ…嫌な予感がするのは私だけか?」

「私も嫌な予感がするんだけど…」

「さ、さぁ!急いでケーキを食べようか!多分、食べれなくなりそうだし!あの人が来たら…全部食われるから」

「え?そんなに?」

「急いで食べた方がいいわ!美衣、手づかみでもいいから食べて!早く!」


「「「「いただきます!」」」」


俺たちは急いでケーキを6等分にし、そして、手づかみで食べ始める。


途中、玄関の方からバタバタと聞こえ始め、恐怖を感じる。それを聞いた3人は青ざめ、食べるペースをあげる。美衣はよくわかっていないながら、俺たちの方を見て急いでパクパクと食べている。

俺たちが口に残ったものをジュースで飲み干していると、扉がバンッ!と開かれる。


「やっほ〜!5歳の誕生日おめでとう!保育園行くよ!今回はみんなもついてきてね!」


「こ、木乃恵…さん…早いですって…」


木乃恵は元気そうだが、ママは息を切らしているようだ。そんなに息を切らす程ではないが、多分、ママは在宅仕事で運動していないからだろう。すごく疲れたような顔をしている。

俺たち4人は小声で相談する。


「で、出た…」

「悪魔の降臨…」

「美衣、あれが最悪の七星…」

「そんなにやばいの?」

「早く逃げた方がいいと思う」

「最悪、リバースする」

「元気を奪われるぞ?」

「こっそり行けばいけるでしょ」


「な〜にを話してるんだろうねぇ!もしかして、私の事?28にもなって?専属警護人が居ないことを笑ってるのかなぁ〜?ねぇ?何のはなしをしているのかなぁ?」


「「「「ひぃぃ!」」」」


俺たちの気づかない間に静かに近寄ってきていた木乃恵に恐怖する。木乃恵は背後に般若のお面のようなものが見える。逃げようとしたが、時すでに遅し、木乃恵の手が俺の頭を鷲掴みにした。それを見た一花は逃げようとしたが、残念ながら俺と同じ目にあう。美衣と葵依はそれを見て、腰を抜かしていた。


「ほら〜さっき何を話してたのかなぁ?言ってごらん?んん?」


「な、なんでもありません!」


わたくし達はどうやって迎えようか相談しておりました!」


「あら?いい出迎えね〜?じゃあアキラくん借りてもいいんだよね?最近、疲れててさ〜」


「構いません!」


「う、裏切り者がぁ!是非一花の方を使ってください!」


俺が木乃恵に連れていかれそうになると、木乃恵の顔をママが掴んでいた。チラッとママを見ると漂う気配はまるで閻魔様のようにも感じた。怖ぇ!


「木乃恵さん?そこに座りなさい。人の家で何してるの?」


「い、痛い!!」


「お前、トマトみたいに潰されてぇのか?あぁ?殺すぞ?クソガキが。うちのせがれに手ぇ出す気か?」


「す、すみません!離しますから!やめてください!」


俺は掴まれていた頭を解放させることとなった。今回はママのおかげで俺は助かった。だが、ママの職業は一体なんなんだ?木乃恵よりも強く、そして、怖い感じがしたぞ?


「で、今日は何しに来たの?」


「あっ!そうでした!外に車がありますから!保育園を見てもらおうと思って!行きますよ!その前に、アキラくんはこの服に着替えてね!」


そう言われ、服を貰う。


その服は俺のサイズとピッタリだった。だが、何やら厚めのズボンと簡単には引きちぎれなさそうなスウェットだった。

エプロンはどうした!黄色い帽子はどうした!?

みんなと手を繋いでキャッキャするんじゃないのか!?


「俺の調べた情報と違うじゃねぇかよォ!!」


俺は地面に泣きながら伏せることとなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る