七星の本性


「他にも聞きたいことある?」


「そうですね。今2歳ですけど、保育…」


すると、木乃恵の携帯が鳴る。何かのクラシック音楽だろう。木乃恵の選択とは思えないほど全然似合ってない。てっきり戦隊系の曲でも流れるのかと思っていた。


「ちょっとごめんね?呼び出しかもしれない…はい!木乃恵ちゃんで〜…え?あ〜捕まった人ね?さっきわめいてた…うん…はぁ?相手しろ?嫌なんだけど?…牢屋に…はい?…はぁ…分かりました。仕方ないですね。あの男の支給されてる額全部くれるなら…やった!じゃあ行きますね〜!…ごめんね〜呼び出されたから行くね!ここのお金は払っとくから!また後で連絡するから!質問の答えもそこに載せとく!じゃ!」


木乃恵はビューン!と効果音が出るような速度でレストランから出ていった。それを見た俺たちは肩の力を抜く。


「なんか人の元気を奪っていくタイプの人だな…」

「なんか疲れるでしょ?だから、あまり会いたくない…家に帰りたい」

「帰るか…」


時刻はお昼時。俺たちは疲れて家に帰ることにした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


俺たちが家に着き一段落すると、一花は俺の前に片膝を立てて座る。俺は一花の前にある椅子の上で足を組み、頬ずえをつく。机の上にはサングラスがあり、それを着用する。そして、茶番を始める。


「さて、今回の報酬だが…お前が欲しいものはなんだ…」

「せんべいであります!」

「せんべいか…他にはないのか?」

「強いていえば味の濃いせんべいが欲しいであります!」

「なるほど…お前は味が飛びっきり濃いせんべいが欲しいとい言うのだな?」

「その通りであります!」

「そうか…」


俺は少し考える。今回の外出で得られたことはなんだ?木乃恵にあったこと。

一花からもらったものはなんだ?喧嘩だな!

今回の評価は星1だ!


「お前には失望したぞ…一花…」

「え?」

「今回は私を満足させていない…つまり、私の期待通りの行動ではなかったということだ」

「そ、そんな!私めは…」

「そんなことをして私の気が変わるとでも思っているのか?お前の褒美はせんべいを3日食べるの禁止だ!」

「は、はい…」


一花は片膝をつきながら、涙を流していた。


「あんたら、何してんの?」


すると、葵依きいがいつの間にか帰ってきていた。


「おかえり!葵依きい姉さん!悪の親玉が部下に褒美をあげるごっこしてた!ちなみに最後の褒美は俺が決めるんだ!」


「ぐすっ…せんべい…食べれない…」


「一花さんはここ1ヶ月せんべいばっか食べてません?まだ食べる気ですか?」


その言葉に一花は目をクワッと開き、葵依を掴む。


「せんべいは偉大なものだ!バカにするなんて許さない!」


「い、いや、馬鹿にはしてませんけど…」


「ふむ…さすがにきついか…ならばこれをやろう」


俺はサングラスを机に置き、椅子から降りて、みんな共有のお菓子箱からあるお菓子を取り出す。


「そ、それは!!」


「「柿の種!!」」


俺は柿の種の封を開け、柿の種をひとつ取り出す。


「この柿の種は俺が企業に頼んでわざわざ作ってもらったものだ。市販では売っていない。かなり味を濃くしてもらった逸品だ。お前たちに食べさせやろう…まずは一花だ…こっちへ来い」


俺は柿の種を一花の方へ向けると直ぐに近寄り、片膝を立て、頭を下げる。実際は俺が醤油を2度漬けし、ただ焼いただけだが…


「では、こちらを向いて口を開けろ」

「はい!」


一花は抵抗なくこちらに口を開けてくる。その中にひとつ柿の種を入れる。パクッと俺の指ごと食べられたが、味が俺にもついているのだろう。必死に舐める。


「こ、これは!美味すぎる!出汁の味がすごい!」


「え!?私も食べたい!」


葵依は一花と同じような動作をし、口を開ける。俺はその中に3つほど柿の種を放り込む。少し残念な顔をしていたが、無視をする。


「ほんとに美味しい…おかずとして食べれる」


「この私めにその柿の種を恵んでくださいぃ!」


一花は土下座をして頼んできたが、俺は断る。


「だめだ。これは俺が企業に報告するためのものだ。一花、代わりに今すぐにまとめろ。そして、それを俺に渡せ」


「はいぃ!即座にさせていただきます!」


一花はスマホを取り出し、すごい速さで文章を作っていく。それを見た俺はドン引きしたが、楽しそうだしいいだろう。


「あっそうそう…なんか届いてたわよ?アキラへって書いてあるけど、どうしたの?」


俺は葵依姉さんから渡された手紙を受け取り、封を開ける。


「俺に?なんだろう…

『アキラくん!見ってる〜?木乃恵ちゃ』

…しんどいな…」


「アキラ?どうしたの?」


葵依きい姉さんが俺の事を心配そうに見てくる。そうだ!こういう時は姉さんの出番だ!


「これ代わりに読んでくれない?ちょっと読みづらくて…」


「アキラ…いいわよ!お姉さんを頼りなさい!なになに?

『アキラくん!見ってる〜?木乃恵ちゃんだよ!実は君にしてもらうことがあるんだ!それは5歳になったら、保育園に行くこと!ちなみに一花ちゃんは留守番だからね!普通に生活できるから、一人で頑張ってね!それといつになるか分からないけど、ほかの七星しちせいと会ってもらう予定だよ!また今度会おうね!


PS.この紙は愛情が注いであるからね!捨てないで!』って書いてあるけど…大丈夫?」


「ちなみに手紙書いてるの七星だぞ?」


「え?…ひっ!ちょっとトイレ行くね」


葵依きい姉さんは口を抑えてトイレに行った。それもそのはず、この紙は少し濡れてる上にキスマークやらものすごく匂いがするのだ。臭いというか生理的に無理な感じの匂いだ。

しかも、中には髪の毛が入っており、それに気づかずに触ってしまい、カサカサという感じがして俺はしんどくなった。


葵依きい姉さんは髪の毛を直に触り、あの香りをかなりの近さで嗅いでいた。そのため、それ以上にダメージを食らったのか吐き気を催していた。

普通の人じゃないならまだしも、七星がこんな感じだったんだ。何か思うこともあっただろう。


「しかし、5歳か…まぁいっか!楽しめばいいだろう!普通にしてればなんとかなるさ!」


「書けました!さぁ!早く私めに柿の…種を?なんだ?これ?…うっ…ちょっと…トイレ…」


「両者ノックダウン!かなりの匂いのようだ!二度とこんなものを送るんじゃない!」


俺はその手紙の汚物でも触るかのように持ち上げ、マッチで火をつける。換気扇の下にいたが、燃える匂いと共にすごい匂いがした。俺はその場でリバースすることになった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


それからは3年間、勉強、遊びで平凡に生活し、俺は5歳となった。


だが、目の前に広がる光景は…


「おにいちゃん!あそぼ!」

「だめ!わたしと!」

「わたち、さんしゃい」

「くっ!殺せ!」

「一緒にお風呂…」

「いい匂いがする…服欲しい」

「パパ…」


取り囲んでいるのは幼女たち、男は俺だけ。先生は暖かく見守ってる。


「これのどこが普通なんだよォ!あの野郎!次会ったら、辛さ100倍のせんべいを食わくしやるぅ!幼児たち!近づ…やめろぉ!!!」


俺は毎日こんな目に会う羽目になった…俺はちゃんと保育園をちゃんと選べば…と後悔している。



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