七星について
俺たちはどこかで話す場所をさがしていた。ファミリーレストランの前を通ると
「お腹…すいちゃった」
「「えぇ〜…」」
「だっていい匂いがするんだもん!」
このファミリーレストランの特徴は店の前を通ると空気が出る。その空気はとても美味しそうな匂いのするものだ。時にはステーキ、時にはハンバーグみたいな感じだ。ちなみに季節限定のものもある。
それにつられてしまったのだろう。
俺たちは中に入り、食事を頼むことにした。なにか食べようかと思っていると、
店員さんはコップを数杯、お手拭きを何個か持ってきてくれた。ただ俺の前にお子様ランチや水を置く時に震えるのはなぜだ。
「ご、ごゆっくりどうぞ…」
「ありがとう!いただきます!もぐもぐ…君たちも…もぐもぐ…頼みなよ!…もぐもぐ…私は食べるから!」
「口にもの含みながら喋らないでくださいよ」
「ん?もぐもぐ…じゃあ遠慮なく…もぐもぐもぐもぐ…」
「まさか喋るの放棄したのか!?」
一花が注意すると木乃恵は喋るのを放棄し、食べることに専念した。頬をリスのように膨らませ、すごい速度でご飯を食べていく。並べられた料理はみるみるうちに消え、俺たちの料理を食べ終わる頃には木乃恵の料理はもう残り少ない状態だった。
俺たちはメニュー表を立てて、木乃恵にバレないようにこっそり話す。
(なぁ?この人、本当に七星の人なのか?しかも統括って…)
(あぁ…この人は本当に七星の統括だ。そして、七星の中で1番強い…私はこの中で4番目だ)
(へ〜…まぁどれだけ強いかはよく分からないからピントは来てないけどな)
(まぁその話は木乃恵姉さんから話を聞いてくれ)
(姉さん?)
(いや、木乃恵さんだ)
(木乃恵姉さん?)
(ッ!別にいいだろ!あの人は一応、面倒を見てくれたんだ!)
「んん!2人とも、イチャイチャしないでくれません?私に対しての嫌がらせ!?25歳の私には辛いよ!?『強い女だからっていい気になるなよ!」 とか『オレの嫁にしてやろう』とかあのクソ野郎…!」
「ドードー!ほら!口拭いて!」
木乃恵はソースでべちゃべちゃの口のまま、過去話を始めようとしたところで俺はお手拭きを用意する。それを見た木乃恵は自分の口を差し出す。
なるほど、口を拭けということか。
一花や姉さん、ママにもやってとねだられるから俺は自然な流れで拭いてしまった。唇の柔らかい感触が手にくるが、もう慣れっこだ。
「アキラ…またやったな?」
「あっ…つい…」
「ありがと〜!これは初めてかも!この木乃恵、君の質問になんでも答えてあげるよ〜!」
先程の雰囲気は嘘のように消え、今はとても上機嫌だ。俺はその言葉に遠慮なく甘えさせてもらう。
「じゃあ質問。七星とは!」
「七星は警護人の中でむちゃくちゃ強いひとのことを言うよ!戦力はだいたい警護人が15〜30人くらい!一花は22人分の働きをするよ!私は30人!1番強いからね!最低が15人からだね!七星はオリオン座がモチーフでなってるよ!砂時計みたいな感じのあの星だよ!本部の名前は…Yってことにしといてね!」
「次に警護人の強さってどうやって決まってるんだ?」
「強さは年に一度の体力頭脳戦っていう検査をする。そこで強さを振り分ける感じだね。ちなみにかなり辛いよ?次の日動けなくなるから、3部に分かれてやるよ!」
「へ〜そんな感じなんだ。専門警護人って?」
この問いに関して、木乃恵は何やらニヤニヤし始めた。
「それを聞いちゃうの〜?大人だね〜?」
「一応調べたんだけど、どの書物も内容が合致しなくて…」
「なるほど?だって、専属警護人に関しては機密事項だもん。テレビでの説明だと『警護人を1年契約で繰り返し雇える』って感じだよね?」
俺はそれに頷く。テレビではそうだったが、本になると『常にそばにいてお金を払って警戒してもらう』や『そばにいるけど、何もしない警護人』とかよく分からなかった。
「ふふふ、それはね!《警護人が雇い主を認め、嫁になるというもの》だよ!お金は払ってもらうけど、少し安くなるかつ年契約の優先が発生するよ!しかも、雇い人と子供を作ってもいい!というものだよ!産まれたら、産休育休制度あり!補償も出るというものだよ!ちなみに1度結ばれたら、解除は無理だよ!」
木乃恵は親指を立ててウインクをしてきた。
どんまい!って感じにも見えた。
「一花…なぜ説明してくれなかったんだ?」
「2歳には難しいかなぁ…と」
「これは説教が必要だな…」
俺は家に帰ったら、一花を怒ることを決めた。
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