第28話
お父様に言う?
私の勘違いで、本当は婚約したい相手は別にいたと?
「きゅ、急すぎではっ?!」
「急なものか。僕は、これでもずっと我慢してきたつもりさ。それに早くしないと、荷物をまとめて隣の国に行ってしまうかもしれない。君と会えるのが、今日だけかもしれない」
「そ、そんな急には引っ越ししませんわ。きっと父も、そんなすぐには出ていきません。ヴィクターとだって、婚約解消の連絡をしなくてはいけませんし」
「君の父親は、もう一生兄上と君を会わせるつもりはないみたいだけどね」
「そうかもしれませんが…」
「それに君だって、兄上を婚約破棄にさせたいんだろう?そしたら、余計早いほうがいい」
「うぅ…」
口では勝てませんね。
はぁ…。婚約相手をヴィクターから、弟の第2王子に変えたと国民に知られたら、なんと思われるのでしょうか。また変なゴシップ記事に書かれるんでしょうね。私が、将来性抜群の男に乗り換えたと。
そして、因果応報とばかりにヴィクターを婚約破棄に追い込んだと面白おかしく描かれるに違いありません。まぁ、本当のことなんですけど。
私は、本当の婚約者すら、見分けられない馬鹿な女ですから…。
「なに暗い顔してるの?僕との婚約は嫌?隣国の顔も分からない貴族の男のほうがいい?もしかして、もう顔合わせ済み?顔が好みだった?」
「私は、顔だけで判断しているわけではありませんよ」
「そう?でも兄上だって性格はあれだけど、顔は抜群に良いじゃない。だから、顔で選んだのかなって思ったんだけど。僕も顔は良いほうだとは思っているけど、兄上には勝てないって、思ってるから」
「どちらもお顔は、とっても良いですよ。陛下の血をひかれていますもの」
うちの国王、本当顔は良いんだよな。本当。
美形は、お得効果なのか。陛下がしおらしく謝られる姿を見ると、国民が「あの顔に免じて、許してやるか」という気持ちにさせられるくらいには、顔面がよい。
そして、その血を受け継いでいるヴィクターや、第2王子やそのほかの弟王子たちも、もれなく顔がいいのだから、美形一族だよなぁ。
男ばかりの一族だから、これでお姫様でも生まれたものだったら、少しだけ顔が見てみたい気もする。王子たちは、陛下似ですけど、女児がお生まれになられたら、妃陛下に似るのかしら。
「本当?じゃあ、僕と婚約しても別にいいってことだよね」
「昔からの約束ですから。別に構いません。それにもともと、私が婚約したかったのは、あなたですもの」
「ほんとうっ!?」
「はい」
ヴィクターと婚約していた時、どれほど婚約を申し込まれたのが、第2王子であればと思ったことか。でも、彼とは歳が離れているし、仲の良い異性の幼馴染がいたと聞いたから。
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