第29話
「あの幼馴染の女の子は、大丈夫ですか?」
「え?」
王子は、最初、きょとんとして、私の言葉に首をかしげていました。一瞬、頭の良い犬のようなしぐさだなと思ってしまいました。絶対に言葉に出しませんが。犬は、前々から飼ってみたいと思っておりましたが、王子と婚約したら、飼うのを許してくれるでしょうか。
出来れば、大型犬が良いです。一緒に遊んだり、散歩出来たら、どんなに良いでしょうか。と、いつも大きな犬を連れている方を見ると思います。
王宮は、広いですし、大丈夫だとは思いますが、顔をしかめる方もいらっしゃるかもしれません。そうしたら、別宅を作ったほうが良いのでしょうか。
…でも、そうすると、今度は犬と一緒にいられませんね。
ああ。思考が飛んでいました。
私がこうして、将来飼いたい犬種を思い描いている間も王子は、考え込んでいました。
本当に誰のことかわからない様子で、私は、いつも小さいころから王子と一緒にいる赤い髪の女の子。ルーナ・アシュレイの名前を挙げました。
「わかりませんか?」
「僕に幼馴染なんて、君以外にいなかったと思うけど」
「ルーナ嬢ですよ」
「……あぁ」
彼女は、いつも王子が帰国してくるのを、待ちわびていて、王子が帰国するとそうそうに喜び、出迎えておりましたから、てっきりそういう仲なのかと思っておりましたが、王子の顔を見るに、どうも違うようです。
「違いましたか?」
「彼女とは、そういうんじゃない」
ぶすくれた顔をしちゃって…。
こうしてみると、王子もやはり年相応の男の子ですね。
かわいらしいこと。
「ふふ」
「…嫉妬してくれてたんなら、まだよかったのに」
「嫉妬ですか?ルーナ嬢に?まさか。お似合いだと、ずっと思っていましたのに」
「なにそれ」
私の言葉に王子は、がっかりしたように、がっくりと肩を落としてしまいました。
私の言葉によほど、ショックを受けた様子です。
そこまででしょうか。
ルーナ嬢は、家柄も良いですし、確かに王子を好きすぎる態度は、わかりやすいですが、素直で優しくて、かわいらしい子だと思いますが。
「彼女は、僕の顔が大好きなんだよ」
「あら。そうでしたか。確かに無理もありませんね」
王子の顔面の良さは、国宝級ですものね。
まぁ、王族はみなそうなのですが。
「それに大臣が、彼女との婚約を進めてきたからであって、決して僕は、彼女に目移りなんてしてない!」
「そ、そうですか…」
「ずっと君一筋だから!」
「は、はい…かしこまりました」
私が、引いてしまうような勢いで、言わなくてもわかっていますのに。
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