第17話

「父上に伝えたら、婚約解消に動いてくれるって」


婚約解消の話をしたのは、つい先日のことです。

ずいぶんと話が早いです。


「もう陛下にお話しされたのですか?」

「こういうのは、早いほうがいいでしょう?兄上のあの浮かれた顔を見るのも、うんざりしているんだ。おまけに兄上と寝ている例の彼女が、兄上だけならまだしも、僕や兄弟にも色目を使うようになって、そろそろ切れそうなんだ」

「ずいぶんと節操のない方でしたのね」


殿下と寝るまで、レイラ嬢と私は全く接点がありません。

ですから、私は彼女に対して何も知りません。婚約者のいる男性と寝るような方ですから、なんとなくは想像ついていたのですが、ほかの兄弟にも手を出そうとするなんて、これは、予想外です。

未来の王妃になりたいという欲望だけで動いているのであれば、まだわかりやすかったのですが。

そういえば、レイラ嬢の調査書には、同性のお友達がいないと書かれていました。なんでも、お友達の彼氏を見ると、すぐに体の関係を持とうとする悪癖があったそうです。そんなことを繰り返していたら、いつのまにか、お友達をなくしていたらしいと書かれておりました。

レイラ嬢は、かなり男遊びは激しい方らしいですわね。

未来の王妃となる方が、男遊びが激しいなどと書かれてしまっては、国民の支持率もダダ下がりでしょう。

その前に潔癖症の現王妃様が許すはずもありませんが。

国王陛下も若かりし頃は、ずいぶんと女性が大好きで、数々の浮名を流していたそうですが、現国王妃様が、それはそれは厳しく制したそうです。

浮気をする方は、いつまでも治らないといわれておりますが、王妃様が、よほど恐ろしかったのか、もしくは浮気も考えられないほど、魅力的な方なのかは、真相は陛下のみが知るところです。

今は、もう王妃様とラブラブな様子が、よく紙面に載っています。

しかし、その女好きな血筋は、殿下に引き継がれた様子です。

そして、そんな過去があったせいで、王妃様は、異性交遊に厳しい方で有名です。

なので、殿下の浮気が知られて恐ろしい人物は、実は王妃様なのです。

私もよく王妃様に浮気をしていないかとよく詰められたものです。

私は、男性の方どころか女性のお友達もいませんから、王妃様は、私をずいぶんと気に入ってくださっているようです。王妃様の目には、私が女性にしては珍しい硬派として、一途に婚約者を愛しているように見えるようです。単に人見知りなだけなのですが。


それはともかく。

婚約解消は、案外早く進みそうです。

陛下としても、下手に王妃様の地雷を踏むのは、避けたいことなのでしょうから。


女好きな殿下と男好きなレイラ嬢。

思い返してみれば、いいカップルじゃありませんか。

お互いの浮気癖を許しあえるようであれば、こんなにも幸せなカップルもいないのではありませ。

カップルが、別れる理由の大半が、相手の浮気と聞きますし。

お互いに浮気をしているのであれば、怒ることもできませんでしょうに。


「ふふふ。人の不幸は、蜜の味とはよく言いますが…。あの二人、これからどうなるのかしら」

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