第16話
お父様が、婚約解消に動いてくださるそうなので、私がするべきことは特にない。
撮った写真を現像するのもいいかもしれません。
私は、昼休みに中庭で楽しそうに女子生徒と話している殿下を見つめながら、カメラをいじっていました。この世の春とでも言わんばかりに殿下の顔は、にっこにこです。殿下は、女の子が大好きですから、女子生徒に囲まれて、さぞや楽しいのでしょう。
お母上様に似た顔立ちで、柔和な顔に似合わず、大勢の女性を周りに侍らすのが大好きなのです。
私と婚約が解消されたら、殿下はどうなるのでしょうか。
少なくとも今よりも自由な時間も行動もなくなることでしょう。
王位継承権がなくなると聞いておりますし、もしかしたら、どこかの国にお婿に行く可能性もあるかもしれませんね。
ですが、そうなると噂の彼女とは離れることになるかもしれません。
いい夢が見れたと、あきらめられるほど、彼女は弱い人間ではなさそうですが。
中庭で、殿下の周りにいた女子生徒たちを蹴散らすかのような、強い剣幕で、レイラ嬢が叫んでいるのが、見えます。
レイラ嬢のその顔を見て、ほかの女子生徒が引いているのが、よく見えます。
自分をめぐって、争っているように見えるのでしょう。
殿下の顔は、まんざらでもない、といった様子です。
つくづく趣味が悪い。
レイラ嬢もよろしくありませんわね。
未来の妃としての点数は、0点です。
どんなときでも冷静に、そして、平等に、自分の感情に振り回されているようでは、いけません。ですが、これは未来の王妃どころか、淑女教育で、習うようなことです。
レイラ嬢は、貴族としてのふるまいもできていないとお叱りを受けてもしかたありません。
まぁ、私には関係ないことですし、彼女も殿下もこの国のトップに立つことは、なくなったのですから、どう動こうと、もうよいのですが。
「ここにいたんだ」
「王子」
今日も王子の顔は、100点満点です。
太陽の光に照らされ、金色の髪が透き通り、青い瞳は、くるくると色を変えています。
本当にきれいな人です。
この容姿にコロッといってしまうお嬢様がたも多いと聞きます。
ある国のお姫様が、一目ぼれして、王子の心をわが物にするために、国を傾けそうになったという噂を聞いたときは、さすがに笑ってしまいましたが、実は、本当なのかもしれません。
「今日もパパラッチ?」
「その言い方はあんまりです。…まぁ、否定はできませんが」
確かに冷静に自身の行動を振り返ってみれば、パパラッチと言われてもしかたありません。
「ですが、お父様が動くそうですので、もう写真を撮る必要はありません。カメラは、趣味として続けていく予定ではありますが」
殿下の浮気も役に立つことがあるものです。
私は、こうして趣味を見つけることができましたし、殿下は好きな方と結ばれることが、できました。
これが、win-winの関係というものなのでしょうか?
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