第14話

ヴィクターは、自惚れが強い男です。

話をしていると、それがよくわかります。

幼少時代に、周りとよく比べられていたから、恐ろしく自尊心が強いのです。自分の能力のなさを認めないために、私の家のお金を使っていましたから。友達も少なく、祝い事のプレゼントの9割は、私の家からのものでした。それを初めて知ったときは、さすがに同情はしました。ですが、確かにこの男に友達はできないだろうなとも思っておりました。


というのも、この男、自分を上に持ち上げるために、誰かを必ず下に見なくては気が済まないタイプですから。それが、他国の王子であろうと、高位の貴族の子息であろうと、だれかれ構わず、お前は、俺の下だ。だから、お前は俺を敬い、俺を喜ばせろという態度をとられたら、誰だって辟易します。ただでさえ、誇り高い貴族の子息や他国の王子様なのです。生まれてこの方、大事にされてきた方ばかりなのですから、ヴィクターの態度は、よほど頭にきたに違いありません。


どんなに温厚な方であろうと、自分のことをあからさまに下に見ているような態度をとられては、気分をよくする人間なんているはずがありません。それでも、よいしょしてくれるであろう人間は、王太子という階級に何も言うことができない身分の人たちです。

王太子という階級を使って、脅しているだけなのです。


しかも、事情を知っている人間は、私が婚約者に選んだからという理由だけで、ヴィクターが王太子になっていることをご存じなのです。そして、私の家の底なしの財力も。真に恐ろしいのは、その財力を持つ私の家であることも。

だから、ヴィクターと仲良くしていなくても、私とさえ、仲良くしていれば、家も国も落ちぶれることはないのだと思われているようで、毎年、私の誕生日の時の贈り物は、すさまじいことになっております。

ヴィクターに知られたら、またうるさいので、黙っていますけど。


「なんだ。お前、プレゼントはこれだけか?」

「……ええ」


別にほしいものなんて、ありません。欲しいと思った瞬間、与えられる立場にあるのですから、誕生日に特別ねだるものなんてないのです。

贈られてくるものは、すべて私の家の財力の見返りを求めてのもの。

ですから、ヴィクターからは隠しているため、目に見えるプレゼントは、確かに少ないのかもしれません。そして、それを見て、ヴィクターは、満足しているようでした。


「やはりな。お前は、その程度の女なのだ」


と、言って、ヴィクターは祝いの言葉も口にせずに帰っていくのも毎年恒例のことでした。

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