第5話

昼下がり。

生徒たちは、昼食をとっていたり、談笑を楽しんでいたりと、思い思いの時間を過ごしている。そして私は、というと図書室の奥の奥の棚に隠れて、カメラを構えていました。見ようによっては、不審者として、通報されてもよかったし、パパラッチだと指さされていてもおかしくはありません。


しかし、そんな私の姿が、ほかの生徒に目撃されることも、通報されることも、ましてや指をさされる危険性を心配する必要はありません。こういう時こそ、実家の金を使うとき。私は、学園長に賄賂という名の金を渡し、この日だけ、図書室を封鎖してもらったのです。

もちろん、図書室の扉を誰かが開けてしまわないように見張りも立てていますので、御心配には及びません。


ってか、もう、それだけするなら、証拠くらい金の力で集めろよ!と言われるかもしれませんが。いや、まぁ、その通りです。なんでしたら、私よりも、もっと上手い人間に任せたほうがいいのでしょうけど、これは気持ちの問題なのです。

私みずからの手で、浮気の証拠を集めたいのです。

そして、それをたたきつけてやりたい。

でないと、金の力でまた解決した。とか言われたら、腹が立ちますもん。

それになんだか探偵ごっこをしているみたいで、少し楽しいのです。

まぁ、すぐに浮気女とイチャイチャしている姿を見て、イラつくのですけど。これも社会勉強だと思って、カメラを構えることにします。

何事も経験です。


最終手段としては、王家の影、と呼ばれている組織に頼むのは、アリだとは思います。ですが、その元締めは、父の親友。頼んだ瞬間、父に話が行き、真っ先に婚約破棄の手続きが済んでしまうことでしょう。

それでは、面白くありません。

私は、私の手で、婚約解消までこぎつけてやるのです。

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