第3話
普段、柔和な笑顔を浮かべている私ですが、眠る二人を見ている今、この瞬間、生涯でもっとも冷たい視線、冷たい表情を私は、していることでしょう。
まぁ、二人は今この時も間抜けな顔をして、眠っているから、分からないんでしょうけども。
婚約は、解消しましょう。
まずは、お父様に相談…。いえ、証拠集めからでしょうか。
私は、持っていたカメラを構えて、写真を撮りました。
私は、写真を撮るのが、趣味なのです。
いつもなら、美しい風景や動物などをとるのですが、少しの間は、この二人が被写体になることでしょうね。
汚らわしい、つまらないものを撮るなんて、私にとっては屈辱ですが、しかたないことです。
人生には、やらなくてはいけないときもあります。
今が、きっとその時なのでしょう。
そして、私は、しばらくの間、様々な角度で、二人のことを撮り続けました。
こんなにも写真を撮っていて、気分が踊らないことなんて、初めてです。
今日は、初めてのことばかりですね。
初めてデーと名付けましょう。
記念日が、増えることはいいことです。
思い出したくもないことばかりで、祝いたいとは、まったく思いませんが。
私は、このまま二人を起こしたら、どうなるのかしら。と少し気になりましたが、面倒になることだけは間違いありません。
なので、帰ることにします。
この男、私が何かを言えば、
嫉妬しているのか?
あまり俺を困らせないでくれ
お前だって、俺との婚約を解消されたら、困るだろう?
そもそもお前に魅力がないのがいけない
少しは、俺を楽しませてみろ
跪け
などなど、こちらが不愉快になることばかり言ってきた男です。
そもそも、最近では、パーティの時すら、私を無視しています。
おかげで、私を良く思わない令嬢や子息の馬鹿にした笑い声が、癇に障ってしかたありません。
私は、大変、お金持ちですから、皆さんのやっかみは分かります。
もちろん、私に味方してくれる方もいらっしゃいます。むしろ、そちらのほうが多いです。やはり、財力は権力。国随一のお金持ちの機嫌を損ねて、いいことなど一つもないということを理解されている方が多いのが、まだ救いでしょうか。
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