第2話
男爵令嬢と王太子。
結ばれるはずのない恋は、やがて燃え上がり…。でしょうか。キャッチコピーは。
知られれば、さぞかし紙面が騒がしくなることでしょう。
三文恋愛小説のごとき、感情だけで、動いたであろう二人の浅はかな行動に、私はため息をつきます。
まぁ、この男と結婚する前に分かってよかったとしましょう。
そう思うことにして、気を取り直します。
私の名前は、ナターシャ・アウルムメタール。
国を支える御三家の一つ、アウルムメタール侯爵家の娘。
ダイヤモンド鉱山や金鉱を持った我が一族は、莫大な富を有しております。
世界でもトップを争うほどの富豪と言われておりますが、実際は、どうなのでしょうか。
興味があまりないので、詳しく聞いたことはありませんが、私が、生涯かけても使いきれないほどお金があることは、間違いありません。
今では、観光名所のようになっている上によく、現王族が住まわれている宮殿と勘違いされることの多い我が家を見てもらえれば、その抱えている富の大きさは、分かるかと思います。
宮殿のように大きな家は、有り余るお金を使った結果、王族が住む城よりも金がかかった上に、広い、綺麗、立派になってしまった。というのは、笑い話として我が家では、話されています。
もちろん、王族が、どう思っているのかは分かりませんが。
王太子から、ねちねち嫌みを言われることがありますので、おそらく良いようには、思われていないんでしょうね。
そんなわけで、超お金持ちの私に求婚する男は、小さいころから後を絶ちません。この国の王子どころか他国の王子も、私に婚約を申し込んできたらしいのですが、幼い私が選んだのは、愚かにも、この馬鹿な浮気男でした。
当時の私は、この男が最初に私に婚約を申し込んだのを、律儀に覚えており、数ある婚約話や告白を蹴り、その約束を果たそうとしたということです。
かくして、今の現国王は、私の家のご機嫌取りと、我が家の莫大な富を目当てに、婚約を結ばせ、今の男を王太子にしたとのことです。
さて、そんな恵まれた私ですが、どうして、この二人の裸を見ることになったのか、話を戻しましょう。
その日は、珍しく王太子のほうから、朝食を一緒にとらないかという誘いがあったのです。
婚約者ですし、私は当然誘いを受け、来てみれば、このありさまといったところです。
そりゃあ、百年の恋も朝食も冷めます。
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