第15話


 翌朝八時。

 埃の舞う木造の一室で目を覚ます。

 窓から差し込む光が埃を照らしている。


「・・・はあ。それにしても硬いベッドね」


 むくっと起き上がり、ついさっきまで自分が横たわっていた寝床を細い寝ぼけ眼で見下げた。


「ふわ・・・ぁ。体痛ぁ・・・」


 首なんかも鳴らしてみたりして、まだ寝たそうにしている脳みそに、どうにか刺激を与えんとしているようだ。

 慣れない環境のせいか、どうやらあまり深い眠りには就けなかったようだ。


「よい・・・しょ」


 ギシィ・・・と年季の入った枠組が軋み、はだけたキャミソールを肩に掛けなおした。


「・・・討伐か」


 化粧台の前に座り、さらさらな髪を梳かし始めたのだった。


*  *


「早いな。まだ時間まで十五分はあるぞ」

「迷惑はかけたくないもの」


 北側正門前。

 既にガルラとその他数名は支度が済んでいたようだ。昨日は見ていない顔ぶれは、ガルラのパーティメンバーなのだろう。


「ふん。まあいい。少し早いが依頼に向かうとしよう。目的地はアシャの湖を東に抜けた先の森だ。養蜂場が見えたらそこから少し北に上る。歩きだと少し遠いが、まあ大丈夫だろう。行けるな?」

「問題ないわ。行きましょう」


 言いながらセラは歩き始めていた。


「ああおいこら!・・・くそ、不愛想な女だな」


 憎まれ口を叩きながらも、やれやれと言った風にガルラも後に続いた。



 一時間ほど歩いた頃。


「・・・へえ。湖はあるのは聞いていたけれど、想像より綺麗なところなのね」


 一行は丁度、湖沿いの小道まで差し掛かっていた。


「まあな。来る奴は少ないが、これでも観光資源として活用されてんだ。ほら、バルコニーのある小屋のほとりに桟橋がかかっているだろ。夜になると自然に植生してる光藻が辺りを照らすんだ。デートスポットとして売りにしていた時期もあったな。どうだ、今晩連れて行ってやろうか?」

「遠慮しておくわ。そこまで長引かせるつもりはないもの」

「・・・ほんとに釣れねえ女だぜ」


 なんだかんだ言って彼らの相性は悪くはないんじゃないだろうか。傍からみるとそんな風に映っても違和感はあまりない。


「まあ、もうここまでこればそんなに遠くはない。精々一時間半って所だろう」

「思ったよりも近い所なのね」

「歩くと時間が掛かるだけだ。馬車を引けば一時間と掛からないさ。ここからはある程度魔物も増えてくるだろう。気を抜くなよ」

「分かってるわ」


 そう掛け合いながら、一行は森の中へと歩みを進めるのだった。

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