第2話
別に、一緒に登校してるからといって、ずっと何かしら話してる訳でもなく、お互い適当なことを考えながら、適当なことをふとした時に話し合うだけというのが、実際の兄弟だと思う。
いやまあ、高校生にもなって兄妹で登校してるのが珍しいと言われればそれまでなのだが。
だから今日も今日とて、妹の歩く速度にやや合わせながら、家に帰りたいなあとか、ベッドが俺を呼んでる、とか考えながら、電線に留まってるカラスをぼんやり見上げていた。
「・・・お兄ちゃん?」
呼ばれて見やると、何か怪訝な顔をしている。
「あ?」
「・・・いや、別に」
なんだこいつ。妙にそわそわとして、辺りを忙しなく見ている。
トイレにでも行き忘れたんだろうか。
それにしても今日は気持ちのいい日だ。
空も高いし、
「お兄ちゃん」
今度は腕の部分の服をぎゅっと掴みながら、身を寄せている。
「どうしたんだよ」
何か様子がおかしいのは伝わった。ただ、何にそこまで気を取られているのかが分からない。
「・・・っ。なんでも、ない」
「?・・・変なヤツだな」
まあ、お兄ちゃんは気にしないけど、お前。周りから見たら朝からべったりくっ付いてるカップルみたいに思われるよ。
「そう言えば、期末まであと2週間だなー」
「・・・うん」
「・・・?まあ、美里は大丈夫か」
「・・・っ」
妹が生唾を飲み込んだ。それが俺に聞こえるくらいの音だった。
微かに震えてる・・・のか?
「・・・お兄ちゃん」
「なんだ」
服を握ってる手が、やや強くなった。
口元が強張って、瞳孔も僅か開いている。
「おい、大丈夫か?」
見るからに様子がおかしい。呼吸も細かくなっている。
「体調が悪いなら、無理せず休もう」
普段、おとなしいと言うか冷静と言うか、落ち着きのある妹だから、尚の事心配だ。
「お兄ちゃん」
「どうした?」
「ここ、どこ?」
・・・は?
「お前急に――」
何言ってんだ、と続けようとして、辺りに視線を移した。
「・・・え」
空が高くて、戦ぐ風も心地いい。遠くには鳥が滑空している。
「・・・どこだ、ここ」
見る限り続く”草原”に、風が吹き抜けた。
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