第21話 真相

 同じ頃、オディオはハンレットの、ルクスの家を訪ねていた。


「……こんな夜中に、ごめん」

「オディオ? どうしたのよ、こんな雪の中」

「なあ、アイファは来てないか?」

「来てないけど……何かあったの?」


 オディオの様子に異変を感じ、ルクスは心配そうに眉根を寄せる。


「俺……伝えたんだ。この先はもう、一緒にはいられないって」


 ルクスは宝石のような瞳を見開き、胸を痛めているような、苦しそうな顔をした。

 オディオも、ローブの下に同様の表情を隠し、言った。


「今頃アイファ、きっと泣いてる。独りで震えてるんだ。早く見つけてやらないと」


 ここにいないなら長居はできないと、オディオは踵を返し、アイファを探しに行こうとする。


「待って。私も行く。それと」


 ルクスが、オディオのローブを掴んで引き止める。


「これから、更に激しい吹雪になるわ。防寒の魔法をかけてあげる。今の私じゃちょっと力が足りないけど、熱の魔石を使えば、五分くらいで術が完了するから」

「そんな余裕ない。こうしてる間にも、アイファが……」

「あなたがアイファのことを大切に思ってるのは、よくわかってるわ。でも、少しは自分のことも考えて」


 ルクスの言葉は叱るというより、心底オディオを心配しているようだった。言葉の中に、オディオへの深い愛情が窺える。


「あなたが風邪でもひいて、そのまま何かあったら、悲しむのは誰だと思ってるの。……もう、昔とは違うんだから」

「……そう、だな」

「さ、この魔術は、肌に直接術式を描くから。そのローブ、脱いで」

「ああ」


 オディオは言われた通り、ローブを脱ぐ。



「昔とは違う、か。――アイファと出会ってから、んだもんな」



 ――ローブの下から、現れたのは。

 以前のオディオの黒髪とは違う、老化による白髪。

 いくつもの皺が刻まれた肌。

 もはや、若者とは言えない男の姿。


 アイファは魔者で、ルクスはエルフ。人間と寿命も成長の速度も違う彼女達は、いまだに変わらず若々しいままで。

 オディオは、彼女達よりもずっと早く、死を迎えることになる。

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