第178話 ごあいさつ

「というわけで、娘さんに脅されてやってきた海野祭です。お父さん、お母さん、娘さんと交際させてください! 清く正しく!」


 僕は天川家にやってきていた。

 というか美琴に無理やり連れてこられた。

 やだよー、斬り殺すとか、怖いよー。

 僕のパートナー、ひょっとしてヤンデレじゃないの? よよよよ……


「まあ、なんだ。うちの娘が迷惑をかけているみたいだが、よろしく頼むよ」


「今日は日本刀を持って「ぶっ殺してやる」って言わないんですね。お父さん」


「今、お前の首筋に娘の刀が添えられているのを見てたら、申し訳なくてな……」


 申し訳ないと思うなら止めてくれよ、僕は生きた心地がしねえよ……

 青い顔をしている僕とは反対に美琴は満面の笑顔を浮かべている。


「お父さんも認めてくれましたね。よかった、これで私たちは公認カップルです!」


「このバカ娘! 想い人を刀で脅す淑女がどこにいるってんだい!」


 げんこつ! お母さんが美琴の脳天にこぶしを落とした。


「あうう、痛いです。お母さん……」


「おだまり! 美琴、今日はあんただけ飯抜きだよ!」


「そ、そんなあ~」


 涙目になっている美琴がかわいそうになってしまうあたり、僕も馬鹿だなあと思う。

 こんな娘ですが末永くよろしく、と、ご両親に言ってもらえる僕は幸せ者だ。


 こちらこそ、よろしくお願いします。と、命拾いした僕は頭を下げた。

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