第177話 あっぱれ学園長

 おいしいお寿司を食べ終わって、有栖川顧問と道分かれた帰り道に、僕はまた見知った相手に出会った。なんと学園長だ。


「久しぶりですな、少年少女は、3日会わなければ見違えるようですぞ」


「どうもどうも、思えば学園長の第一印象は最悪でしたね~」


「それは申し訳なかったですな。どうも責任のある立場をやっていると、立場にのまれて、自分の分相応を忘れがちになる。私も自戒すべきところですぞ」


 ほほほ、と、学園長がつかみどころのないやり方で笑った。

 それから少しだけ真面目な顔になって、学園長は言う。


「思えば私は教育の理念と情熱を見失っていたのかもしれませんな。しかし、キミたちに出会って、少しだけ、それを取り戻せたような気がしますぞ」


「それはよかった」


「時代を作るのは、やはり老人ではなく若者だ。後進の育成を担うものとして、私もまだまだ未熟でした。襟元を正して、子供たちに恥じない学園長を目指します」


「たぷたぷしたおなかとあごを改善すれば、今のセリフがもっとかっこいいですよ」


「ははは、耳が痛い。キミたちもあまり遅くまでうろついてご家族を心配させないように、遊び歩きは常識のはんちゅうで、よろしくお願いしますぞ」


 ではまた、と上品に微笑んで、学園長は去っていった。

 初対面こそ劣悪だったけど、やはり根は悪い人ではないのかもな。

 僕も今は若者だけど、歳月がたてば中年や老人になる。

 明日は我が身、今日もわが身だ。がんばっていこうと思える。

 さて帰ろうか、と思ったところで……


「祭くん、お父さんとお母さんにあいさつしてくれないと、あなたを斬ります」


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