第176話 有栖川顧問より心からの……

「ああ、そうだ! 有栖川顧問に寿司をおごってもらわないと!」


「と、思ってしまったわけね。祭くん?」


 というわけで、僕と美琴は有栖川顧問を捕まえて、放課後回転ずしにやってきていた。

 僕と美琴の大活躍によって、有栖川顧問の給料はベースアップしたらしい。

 その暁には寿司をおごってもらえるという約束だったはずだ。

 僕は忘れていない。

 なので、たらふく食べて、有栖川顧問の財布にダメージを与えるのだ!


「思えば、先生にもお世話に……お世話に……」


「祭くん?」


「なってないっすね。よく教員やってるなあと思いますよ、あんた」


「祭くん!」バシイ!


 ほら、こうやってすぐに人を殴るし! 痛ぇ!

 反面教師としてはこの上ない人材なんだけどね。

 どうにもこうにも、この人だけは最後まで苦手だったな。

 あきれながら寿司を胃袋におさめていると、有栖川顧問がめずらしくふつうに笑う。


「それはね祭くん、キミたちが私に元気をくれるからよ。私ももう少し、若々しくがんばれるかなって、思えるからよ。ふふふ」


「へえ、たまには教員らしいことを言うんですね」


「あはは、教員だもの」


 忘れかけていた事実を思い出して僕と有栖川顧問は、朗らかに笑いあった。


「では祭くん、そろそろお父さんとお母さんにあいさつに行きましょう」

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