第173話 そして!

 そして僕は負けた!


 水圧の剣をふりかぶって、美琴に真っ向勝負を挑んだのだが……

 うおおおおおおおおお、海野祭の勝利を信じて!

 みたいなノリで突っ込んでみたまではよかった!

 あんがい勝てるんじゃないかなー、とか、ちょっと思っていたのだ。

 しかし現実は無情で、剣術の心得がない僕は美琴にあっさりと切り伏せられた。


 勝てるわけないじゃんねー?

 ダムをいくつもひっくり返した水量なら楽勝だろと思ったら、特異点の剣に一刀両断されたわ。きたねえ、きたなすぎる。この宇宙の物理法則で勝負してくれよ……


「祭くん、最後に言い残すことはありますか?」


「まかせろ」


 いつの日か他人にやらせた「参った降参ぎぶあーっぷ!」をこの大舞台で!

 まさかこの僕がやるはめになるとは、壮大な伏線回収だったな……

 『それでも日本男児ですか!?』と美琴にキレられたのは秘密だ。

 降参した僕を斬り殺そうとして、あやうく美琴が失格になりそうになったのも秘密だ。

 そうなった場合、僕が繰り上げ優勝だったのになー、惜しいことをしたぜ。

 ちなみに3位決定戦では、オサムがガブリエルに告白して玉砕した。

 決勝戦と3位決定戦で告白祭りが繰り広げられた、今回の全国大会は、ある意味で伝説を残したと言えよう。


「祭くんには、この手でとどめを刺したかったのに……」


 と美琴は残念そうにしていたが、これは試合であって、殺し合いじゃないからね。

 愛しい人に殺されて、生首を抱きしめられるとか僕の趣味じゃないのでね。


「まったく、祭くんには生殺与奪の美学がたりませんね」


 知るかやかましいわ! そして、月日は流れて……


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