第170話 心の檻を解いて
僕は美琴を閉じ込めていた水の檻を解き放った。
美琴がキョトンとしている。
レーザービームの照射もやめて、はた目には僕が勝負を諦めたように映っただろうか?
そうだなあ、ちっそくの勝ち目も消えたし、負けを認めたのはその通りかもしれない。
ま、そうじゃないんだけどな。
僕はありったけの水量を……文字通り、美琴を封じていた水の檻もふくめて、すべての水量を圧縮して手元に、ひとふりの“剣”を作り出した。
水圧の剣だ。ダムをいくつもひっくり返すほどの水量を、ただ剣に変える。
そして――
「っ!?」
美琴の刺突を、刀の横面を叩いて打ち払う!
僕が剣を使って戦うのがよほど予想外だったのだろう。
美琴は今日初めて、後方にしりぞいて、僕から距離を取った。
うれしいねえ、遠く離れて、届かないからこそ、想いは燃える。
「これが僕の全力だ」
地に足つけて、なんの変哲もなくて、ただ愚直なひとふりの剣。
なにを与えるか、とか、誰に与えるか、とか。
僕にとって、そんな問答に答えがあるとすれば、ひとつだけだ。
生まれなおして、生き直して、それでも変わらなかった人間不信の人恋しさにケリをつけるには、やはり言葉を伝えなければならない。
感謝を、なによりも、僕を受け入れてくれた優しい女の子に、ありがとうの気持ちを。
「ありがとう、美琴。僕は……」
告白。
「僕はね、美琴のことが、好きなんだ」
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