全国大会決勝戦

第161話 さあ美琴、本気で行くぜ

 魔法能力者全国大会、決勝戦の日がやってきた。

 スタジアムの観客席は満員で、みなさん盛り上がっていらっしゃる。


 片や対戦相手を呼吸困難にするセコイ戦法で勝ち上がってきた僕。

 片や真っ向勝負ですべての敵を斬り捨ててきた、天川美琴。

 観客がどちらを応援するかと問われれば、間違いなく後者だろう。

 スタジアムの中心で向かい合う僕と美琴。

 頂点を決するその場所で、美琴は心強く笑う。


「ついにこの時が来ましたね」


「そうだなあ、思えば長い道のりだったような、そうでもないような」


「ふふっ、祭くんのそういうのらりくらりしたところ、変わりませんよね」


「だろうね。一朝一夕で人は変わらないさ」


「だけど、今、祭くんの目には確信がある。私はそれをうれしく思います」


 美琴は魔法能力で折れない刀を呼び出して、ニヤリとする。

 ニヤリと……まったく似合わないやり方で笑ってくれるな。

 一本調子で空元気だった娘が、今は厚みを持って僕の前に立つ。

 そうだな……僕もそれを、うれしく思うさ。


「さあ、美琴、本気で行くぜ? 瞬殺されても恨まないでくれよ」


「入学式の日とは違います。私はあなたに、最強の私を見てほしい」


 見せてもらおうじゃないか。そしてまた……


「最強の僕も見てもらおうじゃないか」


 試合開始! その瞬間に、僕ははるかな空を見上げて、心からの笑みを浮かべた。

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