第159話 私を理解して
「立ち聞きしてすみませんでした。ですが祭、私はあなたの心の悩みをないがしろにしません。むしろ好ましく思います」
「好ましくはないと思うけどなあ、ただの家族関係のコンプレックスだし」
「いいえ、信じるものが誰もいないという悩みは私も同じです! なにもないからこそ、求める。あなたもそうでしょう? 私の心は空虚です。しかしあなたなら! 同じ苦しみを知るあなたなら! 私の心を満たしてくれると信じられるのです! そしてまた私なら、あなたの心にやすらぎをあたえてあげられます! 信じてください、祭!」
ガブリエルが一息にまくしたてる。
荒い息で、恥ずかしさで赤面しながら、半ば涙をためながら。
愛の告白だもんな、必死なのは、僕にもわかるよ。
彼女は彼女なりに僕との出会いに運命を感じて、僕を必要としてくれているんだろう。
うれしくないのかと問われれば、もちろんうれしい。
少し前の僕なら、コロッと彼女の誘惑に負けていたかもしれない。
必死さに同情して、試しに付き合ってみようかと、思っていたかもしれない。
なにしろ高次元存在の天使様だ。
超常的な存在が僕を信じてくれるなら、僕も安心して依存できるってものさ。
だけど今は、僕の心は決まっている。共依存では何も解決しないとわかっている。
だから僕は僕の想いをはっきりと伝える。
「信じるよ。あなたは誠実で、信頼に値する女性だ」
「なら!」
「だけども僕は……」
断る理由はいろいろと思い浮かんだ。
なんでも言い訳するのは簡単だからさ。
だけども、だけども、だけども、僕の心は決まっている。
「だけども僕は、美琴のことが、好きだから」
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