第154話 道
僕自身の理解、そんなものに道筋があるのだろうか?
僕は不思議に思って、お兄さんに尋ねる。
「道って? なんです?」
「順を追って話すか。キミはご家族との関係にジレンマを抱えている。それは解決できるものではない、と俺は思う」
だろうな、と僕も思う。そもそも前世の僕の父親にしろ母親にしろ、ろくな連中ではなかったし、今となっては僕が認めてやる義理もないと思っている。
ここで家族仲良く~みたいな理想論を持ち出されたらお手上げだったが、どうやらお兄さんはそういう話をしたいわけではないらしい。助かるよ。
「きっとキミは本音を言えば、できることなら、家族に酷い仕打ちへの補償をしてほしいと思っているんじゃないか?」
「そりゃまあ、そうですね……」
「だがそれは無理だ。そもそもの話、他人の尊厳を奪う者は補償なんてしない」
そりゃそうだろうなと、思う。
金品でも謝罪でも補償してもらえるなら大助かりだが、あの連中は僕に申し訳ないなんて思いもしないだろう。なんか考えていて腹が立ってきたが、納得して割り切るしかない。
「そのうえで、キミに問う。キミは、他人に親切をしたとき、見返りがほしいか?」
藪から棒に聞かれて、僕はきょとんと目を丸めた。だけど、うん、そうだなあ……
「ちょっとだけ、まあ、もらえたら、うれしいですよね」
「なら、答えは決まっているさ」
お兄さんはフッと息をついて、僕に笑いかけた。
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