第152話 どうもどうも
「あ、お久しぶりです。どうもどうも」
「こちらこそ、どうもどうもさ。決勝戦進出おめでとう。キミはすごい魔法能力者だな」
お兄さんが微笑み、僕の健闘をたたえてくれる。
照れくさいなあ。ていうか気恥ずかしいな……
僕は準決勝までの勝負をセコイ手段で勝ってきたわけだから、本当に恥ずかしい。
こういう気持ちになるから、真っ向勝負って大切なんだなあ、とつくづく思うよ。
海で出会った名も知らぬお兄さんは、僕の隣に腰を下ろして、ふうと息をついた。
「俺たちの時代にも魔法能力者は活躍していたが、今の若者は俺たちの世代よりもずっと強い。あこがれるよ。キミたちが世界大会に出場すると思うと、今から楽しみだ」
「世界?」
「ああ、全国大会の次は世界大会だ。各国の最強の能力者が覇を競う。能力者の祭典さ」
「……まったく考えてなかったです」
「ふふふ、それでいいさ。目の前のことに集中しない者は足元をすくわれるからな」
お兄さんがおかしそうに笑ってくれた。
僕もつられて笑った。少しだけ、気持ちが楽になった気がする。
やはり一人で考えていても気が滅入るばかりだ。
他人との交流が、人間には必要なんだな。うん、そう思うよ。
そんなふうに僕がたそがれていると、お兄さんが再びたずねてくれる。
「で? 元気がなさそうだが、どうしたんだ? 決勝戦の前に、浮かないじゃないか」
「わかりますか……とほほ……」
あっさりと見抜かれた僕は、観念して話を始めた。それは自分の身の上話だ。
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