決戦前夜

第151話 明日は

 準決勝が終わり、翌日が決勝戦になる。

 僕は美琴と距離を取り、決勝戦に備えて一休みしていた。

 美琴と話すことはないのかって?

 いいや、いいや、本心を言えば世間話に興じたいさ。


 だけども、ここで心をゆるめてしまったら、明日の真剣勝負に水を差すようで、ためらわれるのだ。

 真剣勝負……思えば美琴と本気で戦うのは、入学式の日以来かな。

 魔王ミコトとは戦ったけど、あれはノーカウントみたいなものだし。

 楽しみだ。僕の全力に、美琴がどう応えてくれるのか。

 そしてまた、美琴の全力に僕がどう応えられるのか。


 そうだ。僕が、どう応えるべきなのか……

 それだけは、僕も少し迷っている。

 美琴はガブリエルを倒した。

 自らのもちうるすべての能力を使って、勝利したのだ。

 言わずもがな、その心にわだかまりはなく、彼女は大きく成長した。


 だけども僕は……


「どうしたものかねえ。僕は、僕にしかなれないのにな……」


 生まれ変わっても人間不信で、他人と距離を置く僕だ。

 美琴とかかわって、少し変われたような気もしたけれど、根本は変わらない。

 本当に、どうやっても、過去の劣等感や苦しみからは、逃れられないと思う。

 おまえを理解してくれる人間なんてこの世にいない、とは前世の父の言葉だ。

 当たらずとも遠からずだと思ってしまうあたり、僕も心が弱い。


 どうするか、どうしたいか、僕が心を持て余して、運動公園のベンチに座っていると。


「こんにちは、久しぶりだな。元気がなさそうだが、大丈夫か?」


 いつの日か、海のゴミ拾いでお世話になったお兄さんが、声をかけてくれた。


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