第149話 天を裂く

「ガブリエルさん、私はあなたを倒します。お覚悟を」


「ふっ、手品の種はわかりませんが、あなたは今丸腰ですよ? ゆいいつの武器を投げつけておいて、それは無理だと思いますがね」


「刀なら、呼び戻せばいい」


 言葉通りだ。

 美琴は重力操作の魔法で遠く離れた刀を手元に呼び戻した。

 歯噛みするガブリエルを眼力で射抜いて、美琴は言う。


「降りてきなさい。勝負するつもりがないなら、私がそこに行きますよ」


「っ、なめるな! 私も剣士のはしくれです。あなたごときに臆することはしません!」


 ガブリエルが剣を構えて急降下する。

 真っ向勝負を挑むのは、剣士としての意地なのかな?

 しかしながら、敵を“ごとき”呼ばわりとは、やはり彼女は他人を侮っている。

 さりとて美琴に他人を侮る失敗はない。

 彼女はいつでも全力で、戦う相手への敬意を忘れない。

 侮った者と、侮られた者。

 その格差は、斬撃の交差が教えてくれる。

 美琴の刀がガブリエルの装飾剣を一刀両断した。

 さらには白い両翼を一撃のもとに切断する。


 ひゅう! と僕のとなりでオサムが口笛を吹いた。

 高次元の天使を現実の地に叩き落とすとは!

 さすがの僕も、この時ばかりは美琴の美技に見入っていた。

 そして、なおも見苦しく抗おうとしたガブリエルの首を……


「さようなら」


 美琴はすれちがいざま、なぜるように切り落とした。


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