第148話 特異点の剣

「私は祭くんが好き」


 美琴がなにかをつぶやいた。

 ガブリエルの表情がいらだちでゆがむ。

 なんだ? 挑発でもしたのか? すげえな美琴。


「ガブリエルさん。超重力の魔法、“私の”魔法で、あなたを倒します」


「重力? この世界の重力でどうやって高次元に立つ私を倒すと?」


「それは、こうやって」


 美琴はなにげなく一歩を踏み出して、ガブリエルに刀を投げつけた。

 投げつけられた刀がガブリエルの翼を射抜いた時! 僕は一つの気づきを得る。


「そうか! 特異点か!」


「なんだそりゃ? わかるように説明してくれよ。祭」と、オサム。


「……物理法則が破綻する場所だよ。平たく言うと、この宇宙の法則が通用しない場所だ」


「???」


「高次元に立つガブリエルにはこの宇宙の法則は通用しない。だから、美琴は超重力の魔法で特異点を概念化して、刀に付与したんだ。おそらくは、これで高次元にも刃が届く」


「そ、そんなことができるのか????」


 僕が知るかよ。しかし現実に、美琴が投げつけた刀は、ガブリエルの翼を射抜いた。

 本来ならば触れることさえできない高次元の天使に、一矢を報いたのだ。

 重力の魔法……そうか、美琴は姉のわだかまりを克服したんだな。


 僕がうれしく微笑んだその時に、美琴はさらに、強く一歩を踏み込んだ。

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