第147話 美琴の世界

 私は、勝ちたいと願う。

 さりとて、心の中は雑念であふれている。


 祭くんへの想い。

 お姉ちゃんへの未練。

 私を捨てた家族に対する、ぬぐいきれない不安と恐怖。


 こんな場所で、天使なんて高次元存在を前にしても、私の心から迷いは消えない。

 さりとて……


「斬る」


 今、私の心には、迷いを超えた鬼がいる。

 お姉ちゃんへの未練がなんだ。私を捨てた家族に対する劣等感がなんだ。


「斬る」


 神だろうが天使だろうが斬り殺して、私はあの人に会いにいきたい。

 決勝戦で、私を待ってくれている、祭くんに会いに行きたい。


「ただ、斬り殺すだけだ」


 心は決まった。

 そのとき、心の奥底に消えたお姉ちゃんの幻影が、私に微笑んでくれる。

 

「そうか。もうよいのだな。美琴よ」


「うん、お姉ちゃん。ありがとう、今まで守ってくれて」


 ここから先の未来は、私が自分の足で進むべき、自分の道だ。

 折れない剣と、弱虫の心と、そして私の魔法能力のすべてを駆使して――


「勝つよ、私が信じるこの未熟な心と、愛のために」

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