第145話 天に立つ頂点資格者

 翼を切り裂かれて……いや、翼を盾にして窮地をしのいだガブリエルが笑う。


「お見事、しかし残念です。今の交差があなたの唯一の勝機だったのに」


 翼を失い、飛行能力を奪われたというのに、ガブリエルの余裕は崩れない。

 対する美琴は、一切の油断なく刀を正眼に構えている。


「ごたくは結構。どうぞ。次をお願いします」


「それでこそ祭が認めたサムライガール……と、言ってあげたいところですが、私が本気を出せば、あなたに勝ち目はありませんよ?」


「そうかもしれませんね。なにしろ……」


 美琴は冷静に状況を分析して言う。


「おそらく、あなたはまだ、本当の魔法能力を隠している」


「ええ、ご明察」


 ガブリエルが微笑み、片翼の翼を消滅させた。

 彼女の本当の魔法能力とはなにか? それはガブリエル当人が教えてくれる。


「私の魔法能力は言葉そのまま、【天使化】です」


「よくわかりませんが」


「高次元の位相に、自らの存在をシフトできるのです。簡単に言えば、この世界とは別の宇宙の法則を、自らに適用させることができる。つまり――」


 ガブリエルはそう言って、今度こそ、“本物”の天使の両翼を広げた。


「無敵、ということです」


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