第140話 私が勝ちます

「見事でした。祭、男の子の意地を見せていただきましたよ」


 戦いの後、スタジアムを去った僕を出迎えてくれたのは、ガブリエルだった。

 どういうめぐりあわせなのか、美琴もいっしょにいる。


 ほめてもらえてうれしいけど、ちょっと照れくさいな。

 僕は照れ隠しに笑いながら、受け答える。


「ありがと。でもまあ、きわどい勝負だったよ。せこいことをせずに勝てる奴は、本当に強いやつだ。僕には荷が重いね」


「ええ、では真っ向勝負を楽しみにして、決勝戦で待っていなさい。私も、すぐにあなたを追ってまいります」


 そのセリフを準決勝の対戦相手の目の前で言える度胸はすげえよ……

 僕がちらりと美琴を見ると、美琴は何の興味も示さず、ただ静かにうなずいた。


「心頭滅却すれば、火もまたすずし」


「はい?」


「残念ですが、ガブリエルさん。あなたの願いがかなうことはありません。なぜならば」


 美琴がにこりと笑った。

 僕もつられてにこりと笑った。


 ガブリエルだけが不愉快そうにしていたが、僕には美琴の言いたいことがよくわかる。


「なぜならば、私が勝って、決勝戦に進むからです」


 言いながら、美琴はガブリエルとすれ違い、準決勝の舞台へと歩みだす。


「待っていてください祭くん。最高の舞台で、最強の私をお見せしますよ」


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