第138話 私なら
「どういう意味ですか?」
「言葉通りの意味ですよ。私なら、このガブリエルなら、疑心暗鬼に満ちた祭の心を満足させてあげられます。私の……本物の強さでね」
自信満々に笑うガブリエルの横顔を見つめて、美琴は両目を細めた。
睨むわけではないが、いぶかしむような表情をする。
本物だとか、真実だとか、そんな言葉は嘘八百の常とう句だ。
しかし、このとき、ガブリエルの態度には一片の迷いもない。
「美琴さん、私は祭のことが好きかもしれません。いえ、好きです」
「な、なにを言い出すんですか!? いきなり!?」
「あの裏切りにおびえた優しい人の目に、私は心を奪われました。おちゃらけた仮面をかぶって、強がるすがたさえ、私には本当にいとおしく思える」
うろたえる美琴とは反対に、ガブリエルは静かに、透き通った落ち着きで応じる。
「美琴さん、あなたは祭を満足させてあげられますか? それができるのであれば、私はあなたに立場をゆずりましょう。しかしそうでないのであれば……」
「むう……」
「私はあなたを倒して、決勝戦で祭に想いを伝えます。祭もきっと私の愛を受け入れてくれるでしょう。こう見えて、私は誠実ですからね」
最後のひとことは冗談めかせて、ガブリエルが微笑んだ。
困惑している美琴を置き去りにして、ガブリエルは眼下の戦場に視線を戻す。
「さあ見なさい、決着がつきますよ」
水が勝つか、風が勝つか、決着の時は、今だ。
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