第133話 大気の鎧

「俺は常に、圧縮した大気の鎧をまとっている。おまえの不意打ち闇討ちは、俺にはひとつも通用しない」


 大気の鎧!

 僕も魔王と戦った時に、水の膜を身にまとって鎧のように使ったけれど……

 オサムのソレは、正しく鎧と呼ぶべき重厚な防壁なのだとよくわかる。


 なにせ水圧の刃がひとつも通用しなかった。

 もちろん、僕が手加減していたわけではない。

 だから、現状の問題は、オサムの言葉通りだ。

 僕が作る水圧の刃は、オサムにはただのひとつも通用しないことになる。


「まずいな……」


 思わず本音が口からこぼれた。

 水魔法の使い方は多々あれど、攻撃に転用する方法はそれほど多くない。

 その最たる例であるウォーターカッターが通じないとなると……

 僕の側に攻め手がなくなってしまう。

 水圧の剣をつくって接近戦を挑むとしても、大気の鎧を破壊できなければ、結局、剣はオサムにはとどかないわけだし。


 僕の迷いを見透かして、オサムが笑う。


「言っただろ? 余裕ぶっていると、ほえ面かくことになるってな!」


 かまいたち!

 圧縮された大気の刃が、水圧の壁に深い傷をうがつ!

 まずい、まずい! 今は平気だが、このまま一方的に攻め立てられれば、じり貧だ!

 長期戦は僕が不利か……ならば……


「いいだろう。男らしく真っ向勝負といこうじゃないか」


 僕にしてはめずらしく、な!

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