第132話 風と雨の一幕

 暴風――と呼ぶにふさわしい、暴力的な風圧が、僕を襲った。


 台風で風速が表示されるけれど、そんなレベルじゃない。

 一瞬で吹き飛ばされそうになって……しかし水の防壁を作って持ちこたえる。


 僕は魔王みたいに重力操作ができるわけじゃない。

 だから水の壁で暴風をシャットアウトして、自らへのあたりを減らす。


 いきなり大場外リングアウトを狙ってくるとは!

 とっさに対応していなければ、スタジアムの外に放り出されていたところだ!

 僕はおもしろく思って、文句を言う。


「おいおい、他人にはせこいと言っておいて、大雑把にやってくれるな?」


「そういうなよ。先手必勝さ! この程度、対応できないほうが悪いぜ!」


「そうかい。なら僕は後手必勝を狙うさ!」


 くだらない話題を振ったのは、雑談でなく時間稼ぎのためだ。

 僕はオサムの頭上に水圧の刃を配置していた。

 それを雨のように降らせれば、THE ENDだ。

 僕との会話に気を取られて、今はオサムの注意が逸れている。


 はっはっは、悪く思うなよ? 勝負は結局、クレバーにやったほうが強いのさ。

 僕はにんまりと笑って、凶器の雨を打ち下ろした。


 これで準決勝は終幕……と、余裕めかせて思っていたら。


「せこいねえ、せこい男は嫌われるぜ?」


 水圧の刃は、ことごとくが弾かれ、雲散霧消して消えてしまった。

 なんだ? 何が起こった?

 ――その答えは、“大気”の鎧をまとうオサムが教えてくれる。


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