水と風

第131話 勝利の風が呼んでいる

「風が呼んでいる。俺をたたえる勝利の風がな!」


 魔法能力者全国大会、準決勝!

 スタジアムのフィールドを踏んだ僕を待っていたのは、風谷オサムだ。

 強気な発言が虚言ではないとわかるのは、彼が臨戦態勢だからだ。


 しかし勝利の風と来たか。

 他人様に勝利をたたえてもらおうって、それは少し気が早いな。

 悪いが、僕には違うものが見えているよ。


「そうかい? 僕には雨が見えるね。おまえの敗北と、悔し涙の雨がな」


「はははっ、言ってくれるねえ、さすが! ラスボス野郎は言うことが違うぜ!」


 誰がラスボス野郎じゃい。

 僕は悪目立ちするのは嫌いだから、大ボスにはなりたくないんだよ……


 大歓声に背を押されて、僕とオサムがフィールドで向かい合う。

 一触即発……というほどギスギスしていないのは、お互い見知った顔だからだな。

 だが、静かな闘志を燃やしているのは、僕もオサムも同じだ。


「さあ、祭、決着をつけようぜ。俺とおまえ、どっちが強いか!」


「望むところだ。今日ばかりは、僕も正々堂々やらせてもらおう」


「そして! どちらがガブリエルちゃんのハートを射止めるのか!」


「それはどうでもいい……」


 ほしけりゃくれてやるよ……あいつは別に僕のタイプじゃないし。

 やや気の抜けた会話を経て、そして、僕たちの試合が始まる!


「魔法能力者全国大会、準決勝、第一試合、はじめッ!!!!」


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