第123話 信頼できる仲間

 仲間、仲間か。

 意外だな、物言いから察するに、ガブリエルはひとりのほうが好きそうなのに。


「仲間って、友達とは違って?」


「ええ、友と言い換えてもよいでしょう。お父様はいつも言っています。頂点に立つ者は孤独、しかし真の栄光をつかむものには、心から信じられる仲間がいるものだと、ね」


「へえ、良いことを言うね。自慢のお父さんだな」


「はい、お父様は強い人です。私はお父様を心から尊敬しています」


 ガブリエルは誇らしく笑った。しかしその笑顔は一瞬の後に曇ってしまう。


「だからこそ口惜しい。この国には信頼に値する者がいない。ウソと欺瞞ぎまんに満ちた戯言を美徳とする者が多すぎるのです」


 それはどうかな……キミが潔癖症なだけじゃないかな? と思ったけれどね。

 僕はひとまず感想を言わず、自分の胸の内にしまっておく。

 ガブリエルは僕を見て、言う。


「しかし祭、あなたは違いますね?」


「え? 僕? 僕はせこい奴だよ」


「隠さずともよいのです。あなたの目は他人の裏切りに怯えている。しかしそれゆえに、本心では、誰よりも他人への思いやりが深い……私はそう考えます」


「…………」


「隠さずともよいのです」


 ガブリエルは繰り返した。そして彼女は、決定的な一言を、僕に告げる。

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