第119話 有栖川顧問より……

「祭くん!」バシイッ!


「痛っ!? なんで殴るんですか!? しかも今、グーでしたよね!?」


 第一回戦が終わるや否や、僕は有栖川顧問にぶん殴られた。

 この暴力教師! 教育委員会に訴えるぞ!?


「お黙りなさい。この拳の痛みは私の心の痛み、すべてはあなたのひねくれた心を正すための、私という教員の苦しみなのだから!」


「いや、殴られて痛いのは僕ですよ。自分を正当化しないでくれます?」


「祭くん!」バシイッ!」


「痛っ!? また殴りやがった! いい加減にしろよてめえ!」


 てめえ、最後には水底に沈めんぞ! オラア!

 と、僕がキレ気味に応じると、有栖川顧問は懲りもせずに言うのだ。


「正々堂々、戦いなさい。あなたの勝利の暁には、私の給料がベースアップ……」


「は?」


「ではなく、あなたの内申に良い結果をもたらすのだからね」


「……給料ベースアップしたら、寿司でもおごってくださいよ」


「ええ、いいわよ。がんばってね、祭くん」


 有栖川顧問はニコニコして去っていった。

 この女、どうして教員をやれているんだろうか? 謎だ。


 しゃくぜんとしない気分で、殴られ損の僕は、痛む頬をさすった。

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